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第7章 第11話
「どうした、環生 。いい事でもあったのか」
「あ…うん。秀臣 さんが買ってきてくれたお土産が美味しくて」
お土産の温泉饅頭とクッキーでコーヒータイム。
もうすぐ晩ご飯の時間だけど、美味しいから食べちゃう。
早く夜にならないかな…。
今日は、秀臣さんの部屋へ泊まりに行って、好きな人と一緒にいたのかさり気なく聞いてみるつもり。
2人きりの時なら話してくれるかも知れないから。
そう思っていたら、秀臣さんのスマホが鳴った。
相手はわからないけど、仕事の話をしてるみたい。
でも、仕事の話をしてるのに、表情が柔らかいしどこか楽しそう。
もしかして、好きな人からの電話かな…。
「わかった、すぐに行くから待っていてくれ」
あ…、今からお出かけなんだ…。
電話を終えた秀臣さんは、俺たちに『すまない、今から打ち合わせだ。遅くなるから寝ていてくれ』と申し訳なさそうに告げて家を出ていった。
また柊吾 と2人きり。
柊吾と一緒も楽しいけど、ちょっと淋しい。
俺は皆で過ごすのが一番好きだから。
「なぁ、環生。留守番ばっかりもつまらないだろうから、初詣行かないか」
「えっ、もうすぐ暗くなるのに?」
「近所ならいいだろ」
ほら行くぞ…って言うから、急いで上着を羽織って家を出る。
ずっと暖かい部屋にいたから、外の風が冷たい。
手袋とマフラーも持って来ればよかった。
「寒いから手貸せよ」
「あ、うん…」
俺の手をぎゅっと握った柊吾に手を引かれて歩き始める。
俺より少し前を歩いて、車やすれ違う人から守ってくれてるみたい。
新年を迎えても変わらず優しい柊吾。
きっと俺が淋しそうにしてたから連れ出してくれたんだ。
柊吾が恋人だったら幸せだろうな…。
そんな事を考えながら、5分くらい歩いたところで柊吾が足を止めた。
着いたのは地元の人しかお参りに来なさそうな小さな神社。
引っ越してから半年以上たつのに、こんな近くに神社があるなんて知らなかった。
「誰もいないね」
「俺たちの貸し切りだな」
神社でも柊吾と2人きり。
今年は柊吾と過ごす時間が長くなる1年かも知れない。
手水舎もない小ぢんまりした神社だけど、静かで穏やかな時間が流れている気がして心地よかった。
『皆が笑って健康で過ごせますように』
『誠史 さんがたくさん帰って来てくれますように』
『皆に好きな人が現れたら上手くいきますように』
『今年もこの家で楽しくやっていけますように』
『素敵な恋人ができますように』
あれもこれも一生懸命お願いしていたら、柊吾が願い事多すぎだろ…って笑った。
「寒いし、ラーメン食べて帰るか」
「うん、チャーハンと餃子も食べたい」
また柊吾に手を引かれて、柊吾の好きな中華料理屋さんへ。
昔ながらのアットホームな雰囲気。
俺がこの家に来るまで、よく出前をお願いしていたらしい。
お店のテレビでニュースを見ながら2人でニンニクたっぷりの大きな餃子を頬張る。
美味しい物を食べて美味しいねって言い合えるささやかな幸せ。
テレビからは『今夜は流星群が見えるでしょう』ってニュースが聞こえた。
「柊吾、流星群だって」
「いいな。帰ったら見よう」
マンションのベランダで見る約束をして、運ばれてきた大盛りチャーハンとラーメンを平らげた。
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