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第7章 第16話

秀臣(ひでおみ)、まだやってるのか」 「うん…。今、忙しいみたい」 部屋に戻ると、柊吾(しゅうご)が先に俺の布団に入って待っていた。 俺が寒い思いをしなくて済むように温めておいてくれたんだと思う。 いつものように布団に潜り込んで柊吾の腕枕におさまる。 「遅くまで俺たちのためにありがとな」 柊吾の言葉に心がふわっと温かくなる。 仕事だからじゃなくて、俺がしたくてした事なのに。 家政夫を本業にした時に仕事を辞めたから、外に出る機会も人と会う機会も極端に減ってしまったけど、会社勤めをしてる時より充実してる。 サラリーマンその1をしてた時より、ちゃんと俺を見てもらえてるって感じるし、必要とされてるって思える事もたくさんある。 特に何かしなくても優しい言葉をかけてもらえる。 家事を失敗しても怒られるどころか、心配までしてもらえて。 こんなにも自分の存在意義を感じる事ができたのは柊吾たちのおかげ。 「俺の方こそありがとう。俺…この家の家政夫になれて本当に幸せ」 ぎゅっと柊吾に体を寄せて、どさくさ紛れに冷えた足を柊吾の足にくっつけると、体ごと温めるように優しく抱きしめられる。 後頭部を撫でる優しい手が心地いい。 「なぁ、環生(たまき)」 「ん、なぁに?」 すっかり甘えん坊モードの俺はうっとりしながら返事をする。 柊吾に包み込まれてると、あったかいのと守られてる安心感とですぐに眠くなる。 「まだ、誰にも話してない事だけど聞いてくれるか」 真面目なトーンの柊吾の声。 今はぼんやりしてないで、話を聞くタイミングだ。 何だろうと思いながら視線を移す。 「俺、春から大学に復学しようと思う。いつまでも過去を引きずって家族に甘えてないでちゃんと勉強して、就職して…自立しようと思う」 そう告げた柊吾の瞳は強い決意を秘めていた。 将来を見据えたちょっと大人っぽい表情。 柊吾もキラキラ輝いて見えた。 「俺、応援する。柊吾ならできるよ」 急な話で驚いたけど、柊吾が恋人を亡くした悲しみから一歩を踏み出そうとしてるのが嬉しい。 やりたい事があるなら挑戦して欲しい。 でも、そんな大切な事、俺が一番に聞いてしまってよかったのかな…。 「もし復学したら、昼間は大学だ。この家で環生が1人になる時間が増える」 「俺なら大丈夫だよ。家事って結構忙しいし、美味しいご飯作って待ってるから淋しくないよ」 留守番が増える俺の事まで気にしてくれるなんて、柊吾は本当に優しい。 「ありがとう、気にしてくれて…」 「当たり前だ。こんなに淋しがりやで危なっかしい環生を1人で留守番させるなんて心配に決まってるだろ」 冗談っぽく言ったけど、きっと本心なんだと思う。 俺が淋しくないように。 怖い目に遭わないように…。 「父さん達がどう考えてるかわからないし、復学するにも試験がある。まだ大学生確定じゃないけどな」 「大丈夫。皆も応援してくれるし、柊吾ならきっと合格できるよ」 頑張ってね…と、頬にキスをする。 「環生の合格祝いを楽しみに頑張るからな」 そう言いながらニヤニヤ笑いをする柊吾。 この顔、絶対エッチな事考えてる。 柊吾の考えてる事なんてお見通しなんだから。 「…参考までに聞くけど…どんなエッチなご褒美期待してるの?」 「ん?…『1日裸エプロンの環生をいつでもどこでも抱き放題』だろ、それから『挿れたまま何時間過ごせるか実験』だろ、『隠語でおねだりセックス』…』 「も、もういいよ。大丈夫」 俺が想像してた事よりうんとエッチな事だった。 しかもあんなにたくさんスラスラ言えるなんて。 柊吾ってば、いつもそんなエッチな事ばかり考えてるの…? 「柊吾のエッチ。…聞くんじゃなかった」 俺が真っ赤になって頬を膨らませると柊吾が吹き出した。 「冗談に決まってるだろ、環生は可愛いな」 悪かった…と、おでこにごめんねのキス。 「環生のヤラシイご褒美がなくても合格してみせるから、見ててくれ」 「うん、わかった。ずっと見てるからね」 約束のキスは唇に。 きっと柊吾は頑張って俺に合格通知を見せてくれるはず。 無事に合格したら、ちょっとだけエッチなご褒美プレゼントしちゃおうかな…。 そうしたらすごく喜んでくれるはず。 俺は柊吾の唇の温もりを感じながら、嬉しそうな柊吾の笑顔を思い描いた…。

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