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第7章 第18話

「で、でも俺…」 「大丈夫。僕と恋人関係になる前から秀臣(ひでおみ)環生(たまき)に体の関係があるのはわかってたし、それを理解した上で付き合い始めたから。それに僕たちは2人ともタチだからね。セックスは成り立たないんだ」 「えっ…?」 そ、そうなんだ…。 藤枝(ふじえだ)さん、タチなんだ…。 今まで体を繋げた人とは奇跡的に需要と供給が合ってた俺は、特に困った事も自分の役割を気にした事もなかった。 秀臣さんがタチだから、藤枝さんは俺と同じ抱かれる側だって勝手に思い込んでたくらいだし…。 「こだわりの強い秀臣が素直に僕に抱かれる訳もないし、僕もそこは譲れなくてね…。だから、セックスはお互いに合う相手としてもいい事にしてるんだ。体の役割は合わないけど、僕は秀臣を愛しているからね」 な、なるほど…。 …っていう事は、秀臣さんは俺を抱いてもいいし、藤枝さんは誰か違う人を抱くって事なんだ…。 何だか不思議な感じ。 『浮気』ではないから『浮体』? 自分の中だけでは上手く情報処理できなくてチラッと柊吾(しゅうご)を見ると、柊吾も戸惑い気味の様子。 そんな俺たちを見ていた藤枝さんはこう続けた。 「僕はデザイナーの秀臣の才能と存在に惚れたんだ。秀臣が誰かを抱く事でリラックスしてますます輝けるならかまわない。もちろん環生の気持ちもあるだろうけど、僕は環生と秀臣のしたいようにしてもらえばいいよ」 「…本当に?本当にいいんですか?大好きな人に自分だけを見てもらえない事に切なくなったり、傷ついたりしないんですか?」 本音なのか建前なのかが知りたかった。 本当にお互いが浮体を認め合ってるのか、仕方ないから認めてるのか…。 藤枝さんの気持ちがわからないまま、秀臣さんとエッチな事をしてはいけないと思った。 「僕も環生くらい若い頃はそう思ったかも知れないね。でも僕たちは心で繋がっているから、それで辛い思いをする事はないよ」 そうなんだ…。 淋しがりやで甘えん坊で、愛されたがりで好きな人を独り占めしたい俺にはまだわからない感覚だけど、セックスをしなくても愛し合ってる自信があるのはカッコよくて素敵だと思った。 「価値観は人それぞれだよ。これが僕たちが仲良くやっていく最適な方法なんだ」 藤枝さんはそう言って穏やかに笑った。

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