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第7章 第24話(※)
キスをしたり、体を撫で合ったりしたけど結局どうにもならなくて、俺たちはゆっくり体を離した。
麻斗 さんが距離をおこうとしたから、急いでしがみつく。
半ば強引に麻斗さんの腕枕におさまった。
「ごめんね、環生 …。環生が気をつかって指でいいって言ってくれたのに。環生を満足させてあげたいと思って頑張ったけど、結局だめだったね」
「ううん、気持ちよかったよ。俺のためにありがとう、麻斗さん」
環生は優しいね…と、頭を撫で撫でされる。
その手つきや温もりが気持ちいい。
お返しに麻斗さんの頭も撫で撫ですると、ようやく笑ってくれた。
「ディルドを買おうか。そうしたら俺でも環生を満足させてあげられる」
麻斗さんの言葉に、胸が抉られるような思いがした。
嫌だよ、麻斗さん。
どうしてそんな事言うの…?
「そんなの嫌…。俺は麻斗さんの温もりが好き。イケなくても麻斗さんがいいよ」
「でも、ディルドがあれば途中でこんな事にもならないし、お互いに気まずい思いをしなくて済むよ」
麻斗さんの言いたい事はわかる。
でも、でも…!
「ディルドでイッたら、体は満たされるかも知れないけど心は満たされない。俺は麻斗さんがいい。お願いだから悲しい事言わないで…」
麻斗さんに突き離されたような気がして、淋しいし悲しい。
それに、俺のためにそんな事を言う麻斗さんの気持ちを考えたら切なくて涙がボロボロこぼれてきた。
ディルドがあったら麻斗さんの精神的負担は軽くなるかも知れないし、イチャイチャタイムが充実して楽しいかも知れない。
でも…まだ甘えん坊の俺は麻斗さんの温もりが恋しい。
ディルドでの性生活が楽しめるほど成熟するまでは、直接触れて欲しい。
今の俺は『何を』するかより『誰と』するかが大切だって思ってるから。
「ごめんね、環生。ありがとう」
泣かないで…と、唇で涙を拭ってくれる。
その優しさにまた涙があふれてくる。
「俺も無理言ってごめんね、麻斗さん」
俺が抱いてって言ったから麻斗さんが頑張ってくれた。
俺が望まなかったら、こんな事にならなかった。
麻斗さんを傷つけずに済んだのに…。
「環生は謝らなくていいよ」
「ううん、2人のコミュニケーションだから『嬉しい』も『ごめんね』も共有したい。それから…もっと仲良くなれる方法も一緒に考えたい」
『自分が悪い』は相手を大切に思ってるからこそ生まれる気持ち。
でも、時々苦しくなる。
お互いに自分を責めると気まずくなって、2人の時間が楽しめなくなる事もあるって気づいた。
俺は麻斗さんと過ごす時間が好きだから、どうしたら2人で楽しく過ごせるかを考えたい。
…麻斗さんと一緒に。
「今度からは無理せず指でするよ。キスしながら環生の大好きな前立腺をたくさん擦る」
「…嬉しい。いいの?」
「いいよ。敏感な胸もたくさん愛してあげる」
麻斗さんに気持ちいい事をされてるのを想像したら、お尻の奥がキュン…と反応した。
胸もドキドキして、顔も火照ってくる。
「どうしよう…。麻斗さんの長くてキレイな指でエッチな事されるの想像したらドキドキしてきた」
「環生はエッチだね」
そう言って麻斗さんは俺の鼻の頭をツン…とつつく。
麻斗さんのまとう空気が柔らかくなってきた事にホッとした。
「…ねぇ、麻斗さん。これからもエッチな俺でいてもいい?」
「もちろんいいよ。自然な環生のままで。俺も…環生の前では格好をつけすぎない自然の俺でいようかな」
「うん。自然な麻斗さんでいてくれたら嬉しい」
甘えるように手に触れると、包み込むように握ってくれる。
途中で止めてしまったから、ちょっと物足りない気持ちもしたし、萎えてしまったのは俺が原因かな…って思う事もあったけど、手を繋いでいたらそんな事どうでもよくなってきた。
麻斗さんはいつでも俺の事を大切にしてくれるから。
「また環生を抱きたいと思ったら抱かせてくれる?」
「うん、抱いて…。ねぇ麻斗さん。もし今日みたいに途中で辛くなった時に使う合図決めようよ。それをしてくれたら、今からは麻斗さんの指で愛してもらえるって嬉しい気持ちになれるから」
俺の提案を麻斗さんは黙って聞いていてくれた。
「そうだね。それなら俺も『最後までできなくてごめんね』じゃなくて『これからもっと気持ちよくしてあげる』って前向きな気持ちになれるよ」
「俺も『無理させてごめんね』じゃなくて『嬉しい』って思えるから幸せ。合図…何がいいかな」
2人でくっつきながら、相談タイム。
愛撫と合図の違いがすぐにわかって、でも愛撫っぽい仕草って何だろう…って、話し合ったり試したり。
時々キスをして微笑み合って。
最終的に左耳の穴を指先でくすぐる事が合図になった。
「環生」
愛おしそうに俺を見つめる麻斗さん。
左の頬を撫でていた右手がだんだん耳元へ。
今決めたばかりの左耳の穴を指先でくすぐる仕草。
『指でするよ』の合図。
「いいの…?麻斗さん」
「いいよ。さっき途中になってしまったから。環生を満たしてあげたい」
自分で言い出した事なんだけど、この合図かなり恥ずかしい。
だって、体を繋げる時の『挿れるよ』と、同じ意味だから。
「指…挿れるよ」
「うん…、よろしくお願いします」
「どうしたの、急にかしこまって…」
「だ、だって…改めて言われると恥ずかしくて」
俺が照れると麻斗さんは嬉しそうに笑う。
可愛いよ…って囁きながら何度も何度もキスしてくれる。
リラックスした麻斗さんは余裕たっぷり。
言葉と指先で耳も体もたくさん愛してくれる。
巧みな指づかいと甘い唇で、あっという間にイカされてしまった。
「イッた環生も可愛くて仕方ないよ。今度は前もしてあげる…」
「待って、麻斗さん。まだ…んんっ」
嬉しそうな麻斗さんはエッチなキスをしながら、俺が大満足するまで気持ちいい事を続けてくれた…。
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