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第7章 第25話

麻斗(あさと)さんに数え切れないほどイカされた次の日の事。 俺はあくびをしながら、お昼ご飯の食器を洗っていた。 ずっと俺を気づかいながらしてくれたけど、さすがにイキすぎて全体的に下半身が怠くて重い。 それに…ちょっと眠い。 でも、麻斗さんとわかり合えてさらに仲良くなれた気がする。 昨日の事を思い出しながらニヤニヤしていたら、麻斗さんが寄ってきた。 俺をバックハグしながら、わざと右耳の穴をくすぐってくる。 合図は左耳だから、ただのイタズラだけどちょっとドキドキするし、2人だけが知ってる秘密の合図だと思うとそれも楽しい。 「環生(たまき)の今日の予定は?」 「ん…バレンタインチョコの試作…かな」 「バレンタインチョコ作るの?」 「うん…」 もうすぐ保科(ほしな)家に来て初めてのバレンタインデー。 皆には手作りチョコレートをプレゼントするつもり。 皆は定番のプレーン味やバニラ味が好きだから、あれこれ混ぜた複雑な味のする凝ったチョコレートじゃなくて、シンプルで食べ飽きない生チョコレートにする。 買った方が絶対に美味しいに決まってるけど、皆の笑顔を想像しながらどんなチョコにしようかな…って考えたり、ラッピング材を探したりする時間が嬉しい。 バレンタインデーを楽しんでるその雰囲気が楽しい。 皆には当日食べてもらえそうだけど、誠史(せいじ)さんの分はどうしよう。 ロンドンまで送ったら傷んでしまいそうだから、買いチョコにしようかな…。 誠史さん、帰ってきてくれたらいいのに。 そうしたら手作りチョコレートを食べてもらえるのに。 急にそんな事言っても仕事があるから無理かも知れないけど、とりあえず帰ってきてメールを送ってみた。 最近は秀臣(ひでおみ)さんの恋人の賢哉(けんや)さんも遊びに来てくれるようになったから、賢哉さんの分も作ろう。 時々家で打ち合わせをしたり、そのまま泊まっていったりもする賢哉さん。 一人暮らしで外食中心の生活だから、俺の作る家庭料理が美味しいんだって。 そう言われると嬉しくて張り切ってしまう。 最近は受験を控えた柊吾(しゅうご)のためのメニュー中心だけど。 何か柊吾の役に立ちたくて、ネットで片っ端から集中力を高める食材、体を温めたり、消化吸収のよさそうなメニューを調べて、あれこれ作るようになった。 色々勉強していくうちに、俺はふと気づいた。 どれも俺の受験生時代に食卓に並んでいたメニューばかり。 当時は何気なく食べていたけど、母さんが俺に気をつかってくれていた事を知って温かい気持ちになった。 柊吾は試験が近くて勉強ばかりだから、いつもより離れてる時間が長いけど、悔いなく頑張って欲しいから我慢する。 でも、賢哉さんが出入りして話し相手になってくれるからそこまで淋しくはない感じ。 賢哉さんはいつもお土産にキレイな花を一輪買ってきてくれるし、俺の事も可愛がってくれる。 俺をチヤホヤしてくれる人がさらに増えた保科家はますます居心地がよくなって、幸せいっぱい。 「環生の手作りチョコレート楽しみにしてるよ」 「ありがとう、頑張るね」 昨日あんなにキスしたのに、麻斗さんに見つめられるとまたしたくなって、つい上目づかいでおねだりしてしまう。 「環生がエッチな顔してる」 麻斗さんは、可愛いよ…と言いながら優しいキスをしてくれた。

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