喉の渇きを感じて目を覚ますと、外はもう明るくなっていた。 今、何時だろう…。 起きたら治ってるかと思ってたけど、そうでもなかった。 まだ頭がぼんやりするし、ちょっと熱っぽい。 「環生(たまき)、起きたのか」 柊吾(しゅうご)は勉強をしている手を止めて俺の側まで来てくれた。 「熱はどうだ」 おでこに触れる優しい手。 「ん…昨日とあんまり変わらないみたい」 「そうか…。夜もいつもより熱かったからな」 「柊吾…一緒に寝てくれたの？」 「ん？いつも一緒に寝てるだろ」 不思議そうな柊吾の顔。 風邪を引いてる俺を避ける事なく、いつもの俺認識してくれたんだ…。 熟睡してて気づかなかったけど、きっと何度もおでこや頬に触れて熱があるかどうか確認してくれたんだ…。 「何か欲しい物あったら持ってくるぞ」 「ありがとう。ちょっと喉が渇いちゃった。トイレも行きたいし、1回起きるよ」 体を起こそうとすると、背中に手を添えて起こしてくれた。 柊吾が恋しくなって少しだけくっつくと、ふわりと抱きしめて頭を撫でてくれた。 2人でリビングへ行くと、麻斗(あさと)さんが帰っていて洗い物をしていてくれた。 柊吾に事情を聞いて、先に朝ご飯を3人で済ませてくれたみたい。 秀臣(ひでおみ)さんと賢哉(けんや)さんは出かけていて留守だった。 「麻斗さん、おかえりなさい。仕事帰りで疲れてるのにありがとう」 「おはよう、環生。いいよ、完全に元気になるまで家政夫の仕事はお休みだよ」 柊吾だけでなく麻斗さんまで至れり尽くせり。 麻斗さんが作ってくれた優しい味の卵雑炊を半人前食べて風邪薬を飲んだ。 着替えを済ませて歯磨きをしていると、玄関のドアの開く音。 秀臣さんが帰ってきたのかも。 急いでうがいをして玄関まで行くと、そこには誠史(せいじ)さんが立っていた。 誠史さん、帰って来てくれたんだ…。 「ただいま、環生。帰ってきたぞ」 俺に気づいた誠史さんが、荷物をおろして両腕を広げてくれる。 今すぐその胸に飛び込みたいけど、風邪をうつしたらいけないから我慢する。 「おかえりなさい、誠史さん」 「どうした環生。何かあったのかい？」 「うん…ちょっと熱があって…。今から休むところ」 「そうか、冷えるから部屋へ行こう」 優しく肩を抱いてくれた誠史さんと一緒にリビングへ。 誠史さんの帰国に驚いたのは麻斗さんと柊吾。 事情を察した麻斗さんは、家族の会話を短めに切り上げて、誠史さんに俺の看病を託す。 「よかったね、環生。休む前に父さんに会えて」 そう微笑んで俺たちを2人きりにしてくれた。