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第8章 第3話

賢哉(けんや)さんとキスをしてしまった日の夜の事。 流れで賢哉さんが泊まっていく事になったから、今夜は柊吾(しゅうご)のベッドで眠る。 何となく気まずくて、いつもより少し早めにベッドに入って、ファッション雑誌を見ながら柊吾とおしゃべりタイム。 「そう言えば環生(たまき)、お願い事決まったか?」 バレンタインデーに皆にプレゼントした『お願い事何でも一つ叶える券』。 麻斗(あさと)さんの提案で、皆からも1枚ずつプレゼントしてもらえた俺は、叶えてもらいたい願い事をずっと考えてる。 水族館デートしてって言おうかな、それとも美味しいご飯を食べたいって言おうかな…。 あれこれ想像するのが楽しくて、なかなか一つに決められない。 「…まだ悩んでるけど、柊吾の分は決まったよ」 「ん…、何して欲しい」 「俺ね、この『お願い事何でも一つ叶える券』を年間パスにして欲しい」 「何だよ、それ。環生は欲張りだな」 …そうだよね…。 俺もさすがにそれは欲張りすぎだし、ズルイと思う。 「だって…一つになんて決められないよ。柊吾にはいっぱいワガママ言いたい」 ちょっとだけ体を寄せて甘えると、頬を染めた柊吾は雑誌を閉じて腕枕をしてくれた。 「券なんかなくても、環生のワガママなら何でも叶えてやるぞ」 その場しのぎのセリフでも、言葉遊びでもなく、柊吾は本気でそう思ってるし、俺が望んだらそのワガママを何だって叶えてくれる。 「うん…わかってる。でも、大学始まったらわからないでしょ?俺、疲れてる柊吾を見たらエッチな事したいって思っても遠慮しちゃうと思うから…。どうしても我慢できなくなった時のお守り用に年間パスを持ってたいの」 「俺にセックスをねだる用に年間パスが欲しいのか?」 驚いた様子の柊吾。 願い事はそれだけじゃないけど、そういう目的でも使いたい。 「うん…。1回きりだと、券がなくなるのが不安で次回にしようって思うから、結局言い出せないパターンになりそうで…。でも、年間パスなら気軽におねだりできるかなぁ…って」 「はぁ…。お前、可愛すぎだろ…」 柊吾は俺を抱き寄せて大きなため息をついた。 思ってたより好感触。 この感じだと、年間パスにしてもらえそう。 もう一息…のところだったら、上目づかいのおねだり顔をしてみようかと思ってたけど。 「年間パスでも永久パスでも何でもいい。環生が安心できるならそれで」 「ありがとう、柊吾。大好き」 ぎゅうっと抱きつくと、鼻をギュッとつままれた。 「お前、後半はわざとだろ」 バレバレなんだよ…と言いながらも、柊吾は嬉しそう。 柊吾は可愛く甘えられるのが好きだから。 「うん、わざと。でも柊吾そういうの好きでしょ」 柊吾の鼻先をチョンとつつくと、『大好物だ』と、抱きしめられる。 イチャイチャも楽しいけど、こういうふざけ合いも楽しい。 恋人っぽい甘い触れ合いができるのも、友達みたいに冗談が言い合えるのも楽しい。 笑っていたら柊吾がじっと俺を見つめていた。 熱い眼差しに胸がドキン…と音を立てる。 真面目な顔をすると、ちょっと大人びて凛々しく見える柊吾。 俺が柊吾のこの表情に弱いって知ってて、そういう顔をする。 「…柊吾、絶対わざとでしょ」 「あぁ、わざとだ。環生そういうの好きだろ」 「…大好物」 俺が照れると、柊吾は得意げな顔をする。 それが悔しくてキスを仕掛けると、あっという間に柊吾のペース。 抱きしめられて唇が重なるのを感じていると、お腹の奥の方が疼き始める。 「ん…柊吾…」 「どうした、環生」 「…年間パス…使いたくなっちゃった」 「いいぞ。どうしたい?」 俺の『抱いて』にすぐ応えてくれる柊吾。 柊吾もしたいって思ってくれてたのかな…。 「俺…イチャイチャ甘々のまったりセックスがしたい。最近の柊吾激しかったから…優しく可愛がって欲しい」 いい?…って聞くと、柊吾は照れ臭そうに笑う。 「環生の気が済むまで、いくらでも可愛がってやるからな」 柊吾は優しく頭を撫でてくれた。

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