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第8章 第9話
「環生 、ベッドへ行こう」
秀臣 さんは俺を軽々と抱き上げるとベッドへ向かう。
賢哉 さんが掛布団を畳んで作ってくれたスペースの真ん中にそっと下ろされる。
「で、でも…。いいのかな…」
俺の両側に腰を下ろした2人の顔を交互に見つめる。
だってここは恋人同士の秀臣さんと賢哉さんが眠ってるベッド。
時々俺も潜り込んで眠ってるし、秀臣さんとエッチな事をしてるベッドではあるけど、何だか2人に申し訳ない気がしてしまう。
「元々ここは秀臣と環生のベッドだよ。時々僕が寝かせてもらっているだけ。環生が遠慮する必要はどこにもないよ」
そう言って賢哉さんがそっと手を握ってくれる。
そうか…。
俺が色々気にすると、かえって賢哉さんに気をつかわせてしまうんだ…。
賢哉さんも優しい人。
俺が乱入したせいで、秀臣さんとの2人の時間が減ってしまった上に、余計な気づかいまでする羽目になったのに…。
もうあれこれ考えるのはやめよう。
本当は俺だって早く3人でセックスがしたい。
結局、性欲最優先な自分を認めるのが怖くて、あれこれ理屈を並べてるだけだから。
「ありがとう、賢哉さん」
開き直って賢哉さんを見つめると、急に心臓がドキドキし始めた。
改めて賢哉さんを見たらカッコイイし、大人の魅力満載だし、優しいし…。
そんな素敵な人と体を重ねる事ができるなんて贅沢すぎる。
賢哉さんとするのは初めてだから、恥ずかしくてどんな顔をしたらいいかわからない。
リードしてもらうつもりで、うつむきながら少しだけ体を寄せると、ふわりと抱きしめられる。
賢哉さんのにおいもホッとするいいにおい。
前に抱きしめられた時も、どうしてこんなにリラックスできるんだろうって思ってたけど、ようやく理由がわかった。
賢哉さんは、秀臣さんやこの部屋やベッドの混じったにおいをまとっていたから。
俺も無意識に賢哉さんのにおいがついたベッドで眠ってた。
きっとこのベッドを通して、賢哉さんの気配やにおいに包まれて眠ってたから、それを体が覚えてたのかも知れない。
このにおいは心地いいって。
「賢哉さん…」
自分から手を伸ばして賢哉さんに抱きつくと、賢哉さんは俺の腰に手を添えて膝の上に乗せてくれた。
「初めてキスした時と同じだね」
「うん…」
「続きをしても?」
「うん…」
瞳を閉じてキスを待っていると、少しの間の後で柔らかく触れる温もり。
そのまま何度かしてくれると思って待っていたけど、全然そんな気配がない。
おかしいな…と思って瞳を開けると、賢哉さんがじっと俺を見つめていた。
「賢哉さんの意地悪」
きっと『早くキスして』って言いたげな顔をしてたと思う。
俺だけキス顔を晒すなんて恥ずかしすぎる。
「それなら環生も見ていたらいいよ。僕が環生にキスしてるところをずっと」
温かな手が頬に触れたかと思うと、ゆっくり賢哉さんの整った顔が近づいてくる。
そんなの無理に決まってる。
恥ずかしくて、視界いっぱいのイケメンキス顔を直視できる訳がない。
耐えられなくてギュッと瞳を閉じると、賢哉さんがクスッと笑った。
「環生はいちいち反応が面白いな。もっと意地悪をしてみたくなる」
「酷い、賢哉さん」
いつもならぷうっと頬を膨らませてスネるけど、大人の俺はひと味違うんだから。
俺は賢哉さんの頬を両手で引き寄せて勢いよく口づけた。
舌先で口をこじ開けるようにして、自分から舌を差し込んだ。
「ん…はぁん…」
仕掛けたのは俺だけど、経験値が違いすぎてすぐに賢哉さんのペース。
後頭部に添えられた手でしっかり固定されたまま溶け合うような絡み合うようなキスをされた俺は、もう夢心地。
ふにゃふにゃになっていると、秀臣さんが背中を支えて撫でてくれた。
「秀臣どうした、顔が赤い」
からかうような賢哉さんの声。
秀臣さんに視線を移すと、秀臣さんは頬を染めてモジモジしていた。
「秀臣さん…?」
どうしたの…?と様子を伺っても秀臣さんは黙ったまま。
「秀臣は環生と僕のキスを見て照れているんだよ」
こんなに無愛想なのに、そういうところが可愛くてね…と、愛おしそうに話してくれる賢哉さん。
「恋人の賢哉と可愛い環生のキスを見て何も感じない訳がない」
賢哉さんの気持ちがよくわかる。
いつもは口数も少なくて落ち着いた雰囲気の大人なのに、そんな可愛い事されたらキュンとしてしまう。
「秀臣さんもぎゅってして…」
俺は秀臣さんに向かって手を伸ばした。
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