216 / 420
第8章 第17話(※)side.麻斗
〜side.麻斗 〜
「麻斗さん、あのね。俺…大人の扉を開けちゃったの」
「大人の扉?」
連休初日の夜は環生 が泊まりにやってくる。
いつもならベッドに入ると、すぐに腕枕におさまって甘えてくるのに、今夜は腕が触れ合う距離で横になるだけ。
最近、環生と柊吾 の様子も変わったし、それと何か関係があるんだろうか。
相変わらず仲はよさそうだけど、今までみたいにべったりニコイチな感じではなく、何となくそれぞれ独立したような雰囲気。
春から柊吾が復学して離れ離れになる時間が増えるから、離れる練習でもしているのかも知れない。
『俺…大人になりたい』
そう言って環生が苦手な椎茸を食べようとしたり、秀臣 の仕草を真似してみたり。
その発想が子供そのもので、そんな環生が可愛くてたまらない。
割としっかりした考えを持っているはずなのに、やっている事は幼くて…そのギャップが愛おしい。
柊吾もあまり環生を追いかけ回さなくなったし、環生が出かけていてもソワソワしなくなってきた。
でも、環生が留守の時はいつもスマホの着信音を大きくしているのを知っている。
環生から連絡があったら、すぐに駆けつけるつもりでいるらしい。
2人が頑張って大人になろうとする姿が微笑ましい。
もっとゆっくりでいいのに…と思いながら、秀臣と一緒に保護者感覚で見守っている。
「うん…。あのね…二輪挿し。秀臣さんと賢哉 さんに同時に挿れてもらったの」
俺は耳を疑った。
まさか、そんな事をしていたなんて。
環生が気怠そうにしていたのも、筋肉痛の時みたいにぎこちない動きをしていたのも、それが原因だ。
秀臣が心配そうな顔をしていたから、珍しく秀臣が抱き潰したのかと思っていたら、まさかの二輪挿し。
藤枝 さんが環生の事を気に入っているのを薄々感じてはいたけれど。
環生も甘えるような瞳で彼を見つめていたから、体の関係を持つのも時間の問題だと思っていた。
同意の上なら3Pをしてくれてもかまわないけど、環生の事は大切にして欲しい。
「環生の小さなお尻に2人分も入ったの?」
「うん…最初はちょっと痛くて怖かったけど、入っちゃったらすごく気持ちよかったよ」
「楽しめたならよかったね。でもお尻が壊れるといけないから無理はいけないよ」
「うん…」
環生の口から具体的な性事情を聞くのは複雑な気持ちだ。
俺の知らないところで、誰かしらに抱かれているのはわかっていたけど、基本的に環生はそれを口にする事はなかったから。
「もしかして、何か…困った事でもあるの?」
「…うん…」
「俺でよければ聞くよ」
「ありがとう…」
言い出しづらそうにもじもじしているから、手を握って環生の言葉を待った。
「…あのね、麻斗さん。俺のお尻…ゆるゆるになってないか確認して欲しいの」
真っ赤な顔をしていたけど、眼差しは真剣だった。
エッチなお誘いではなくて、本気で確認作業をして欲しいと思っているらしい。
「いいけど…柊吾じゃなくていいの?環生のお尻の具合を一番知ってるのは柊吾なのに」
「柊吾には言えない…。もし、ゆるゆるになっちゃってたら、無理するからだって叱られそうだから。俺のお尻が原因で、柊吾と賢哉さんの仲が悪くなるのも嫌だし…」
俺だって環生をめちゃくちゃにされた事がわかったら、藤枝 さんと仲良くしていける自信なんてない。
環生は俺が藤枝さんに抗議せず、穏便に事を済ませると信じているんだ。
事を荒立てない事と、何も感じないは『=』じゃないのに。
でも、それを伝えたら環生の頼り先がなくなるのがわかっているから、言葉にはしない。
「わかった、俺が確認するよ」
「よかった…、ありがとう」
環生は恥ずかしそうに下だけを脱ぐと、四つん這いになって上体を下げた。
プリッと可愛い環生のお尻が丸見え。
柊吾だったらそのまま覆いかぶさって抱いてしまうんだろうな…と思いつつ、環生のお尻へ近づく。
「触るよ、環生」
「うん…」
両手でそっとお尻を割り開いてみると、いつもより赤みを帯びていて痛々しかった。
目立った外傷がなくて胸を撫で下ろす。
「少し赤くなっているし、いつもより腫れているけどキレイだよ。見たところ傷もついていなさそうだよ」
「よかった…」
安心したような環生の声。
「麻斗さん、中も…確認してくれる?」
自分ではわからないから…と、申し訳なさそうな様子。
「いいよ。環生の不安がなくなるまでしっかり確認してあげるよ」
蕾にローションを塗ると、体が疼くのか、条件反射なのか入口がヒクヒクし始めた。
こんな小さな孔でどうやって二本も同時に受け入れたんだろう。
「いつもより柔らかい気がするよ。次は指を挿れるよ」
「うん…」
指先に少し力を入れると、スルッと簡単に指が入ってしまった。
トロトロで温かい中は変わらなかったけど、確かにいつもほどの締まりはなかった。
大事な環生の体にこんな事をして…と、胸に暗い感情がわき上がってくる。
もちろん秀臣たちが環生に無理強いをするはずがない。
環生が望んでこうなった事はわかっていても、心の整理が追いつかない。
「…ぁ…」
きゅっとシーツをつかんで声が出ないように耐えている環生。
こんなに可愛くていたいけな環生に、大柄な2人が群がって同時に二本も挿入するなんて。
「麻斗さん…どう?」
「あぁ、ごめんね。やっぱりいつもよりは緩くなっている感じがするよ。中に小さな傷があるかも知れないし、しばらくセックスは休んだ方がいいかも知れないね」
「そっか…ありがとう」
「どういたしまして」
環生のお尻と自分の指を拭いて、不安そうにしている環生をぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫だよ、時間が経てば元通りになるよ」
「うん…」
すぐに返事はしたけど、いつもの元気はなかった。
「二輪挿しした事、後悔してるの?」
「ううん、してない…。でも、初めてだから自分の体がどうなっちゃったのか不安で…。このままお尻がゆるゆるになって、トイレが我慢できなくなっちゃったらどうしよう…とか、二輪挿しでしか満足できない体になってたらどうしようって…」
あぁ、それで…。
いつもより食べる量が少なかったのは、トイレの事を気にしていたんだ。
「大丈夫。休めばきっとよくなるし、環生は愛情を感じ取るのが上手だから、挿入以外でもちゃんと満たされるよ」
頭をゆっくり撫でながら伝えると、ようやく微笑んだ。
「ありがとう、麻斗さん。心配ばかりかけてごめんね」
「いいよ。でも、できればもう少しお手柔らかにお願いしたいな。環生は時々驚く事をするから心臓に悪いよ」
「うん…。これからは気をつけるね」
それからしばらく俺の腕の中にいた環生。
落ち着いた頃、『甘えさせてくれてありがとう』と言って俺から離れて掛布団にくるまった。
いつもならくっついたまま眠ろうとするのに。
これも『大人化計画』の一つなんだろうか。
環生の自立を淋しく思う自分に気づいた。
俺も環生離れが必要なのかも知れない…と思いながら、部屋の明かりを消した。
「おやすみ、環生」
「おやすみなさい、麻斗さん」
環生の気配はするのに、どこか環生が遠い。
いつもなら環生の柔らかな髪が頬に触れたり、健やかな呼吸を感じられたりして、環生を近くに感じるのに。
思わず頬に触れると、すぐに環生が頬ずりをしてきた。
まるで俺に触れられるのを待っていたかのように。
「環生?」
「うぅ…やっぱり我慢できない。麻斗さん、今だけ大人になるの忘れて甘えてもいい?」
「いいよ、大人だって甘えていいんだよ」
部屋が暗くて表情はよくわからないけど、さっきよりぎゅうっと抱きついてきたから、きっと喜んでいるんだと思う。
「はぁ…、大人になるって大変。やっぱり大人子供でいようかな…」
「いいよ、それでも。俺も甘えてこない環生はちょっと物足りない気がしていたから」
おでこにキスをして頭や背中をゆっくり撫でる。
「…もう。そうやって甘やかすから…」
きっと、ぷうっと頬を膨らませているんだろう。
そんなところも愛らしい環生。
「俺にはたくさん甘えていいんだよ」
「…ありがとう、麻斗さん」
もう少し…あともう少しだけ。
そんなに駆け足で大人にならなくていい。
もう少しだけ俺の腕の中にいて甘えて欲しい。
そんな事を思いながら、いいにおいのする環生をぎゅっと抱きしめた。
ともだちにシェアしよう!