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第9章 第2話

次の日、洗濯を終えた俺は近所の書店に駆け込んだ。 1冊でいいから残っていて欲しい。 そう思ったけど、雑誌コーナーには『完売しました』の貼り紙。 他の書店まで足を伸ばしたけど、どこも同じだった。 こんなに人気だなんて知らなかった…。 今度からは予約しよう。 諦め半分でのぞいた近所のコンビニで見つけた時は嬉しくて小躍りしたくなった。 ビニール袋の中でぐにゃっと曲がらないよう、なるべく平たくして大切に持って帰った。 手を洗って、食卓のテーブルをキレイに拭いて…いざ、開封の儀。 ドキドキしながら彼の企画ページを探す。 新玉ねぎがゴロゴロ入った和風のオニオンスープ。 ほわっと温かい気持ちになるナチュラルなランチョンマットと手作りっぽい食器の相性が抜群だった。 「楽しそうだね。何を読んでるの?」 「麻斗(あさと)さん…。これね、気になるフードコーディネーターさんが載ってる雑誌だよ」 「へぇ…。あぁ、彼だね。店のお客さんが話してるのを聞いた事あるよ」 「そうなんだ…」 やっぱり彼は人気者なんだ。 そうだよね、こんなに素敵な料理や空間を演出できる人だもん。 「まだ彼の事をよく知らないけど、料理の雰囲気がすごく好きなの。このスープ作ってみようかな」 「好きって思える事があるって素敵だね。スープ楽しみにしてるよ」 麻斗さんは、そう言ってこめかみにチュッとキスをしてくれた。 お昼ご飯に和風オニオンスープを作ってみた。 それっぽい食器がなかったからお椀で代用して。 甘くて、お出汁の優しい味がした。 皆が美味しいって言ってくれたから、張り切って晩ご飯用にも作った。 柊吾(しゅうご)のリクエストのハンバーグにもマッチした。 喜んだ柊吾はスープを3回もおかわりしてくれた。 食卓が皆の笑顔でいっぱい。 俺はそれが嬉しくてたまらなかった。

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