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第9章 第7話

麻斗(あさと)さんと誠史(せいじ)さんの噂話をしてから2日後の事。 お昼ご飯の片付けを済ませてぼんやりしていたら、本当に誠史さんが帰ってきてくれた。 「やぁ、環生(たまき)。元気にしていたかい?」 「誠史さん、おかえりなさい。会いたかったよ」 「ただいま、環生。これは環生へのお土産だ」 玄関でお出迎えした俺を見ると、誠史さんは紙袋いっぱいのお土産をくれた。 想像以上にずっしり重いけど、何が入ってるんだろう…。 「ありがとう、誠史さん。でも、お土産の前に…」 瞳を閉じてキスをねだると、肩を抱かれてチュッと口づけられた。 「相変わらず可愛いなぁ、環生は」 「ふふっ、嬉しい。俺、皆に声をかけてくるから先にリビングで休んでてね」 「あぁ、その前にいいか」 「えっ?」 気づいたら荷物をおろした誠史さんにぎゅうっと抱きしめられていた。 誠史さんの官能的ないいにおい。 久しぶりの優しい温もり。 はぁ…癒される。 もっと嗅ぎたい…。 首筋に鼻先を埋めて誠史さんのにおいを肺いっぱいに吸い込むと、勝手に体が火照ってくる。 においを嗅いだだけで発情するなんてはしたないって思うのに、体がムズムズしてくる。 こっそり下半身を押しつけながら抱きついていると、優しく頭を撫でられた。 「誰か…好きな男でもできたのかと思ったが…そうでもなさそうだ」 安心したような誠史さんの表情にドキッとした。 きっと香川(かがわ)さんに夢中で、誠史さんに連絡しなかったから、俺に恋人ができたって勘違いしたのかも。 俺が誰かに恋をする事を望んでいるのに、いざそんな雰囲気になったら不安になるなんて。 淋しいって…思ってくれたの…? 「好きな人はいないけど『推し』が見つかったの。その人のおかげで毎日すごく楽しいよ。後でゆっくり聞いてね」 俺は誠史さんの頬にチュッとキスをした。

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