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第10章 第1話
旅行から帰ってからは何かと大忙し。
衣替えをしたり、リビングのラグやクッションを夏仕様にしたり。
そうこうしているうちに6月になった。
梅雨入りして、ベランダの紫陽花がキレイな季節。
そんな中、保科 家にカブトムシの番が仲間入りした。
カブトムシは秀臣 さんのエッチなパンツのリピーターの本條 湊世 さんから譲り受けた。
湊世さんはパンツを購入してくれる度、『夫が可愛いと誉めてくれました』とか、『このパンツをはくと、ドキドキして毎日が楽しいです』とか、『見た目の可愛さだけでなく生地の柔らかさも気に入っていて毎日身につけています』とか、心のこもった丁寧なメッセージをくれる。
最近は問い合わせの対応もさせてもらえるようになった俺は、レビューやメッセージの返信もする。
特に湊世さんのメッセージが楽しみ。
俺が秀臣さんのパンツの素敵だなぁって思ってるところを湊世さんも誉めてくれるから。
それが嬉しくて毎回俺も丁寧にお礼の返信をする。
何回かやり取りしていくうちにだんだん仲良くなって、個人のSNSで繋がるようになって、お互いの投稿にいいねをするようになった。
歳も近いし、何となく感覚も似てる。
会った事はないけど、昔からの友達みたいな感じ。
新婚の湊世さんのSNSには、イケメンで優しそうな夫の紘斗 さんとのラブラブな様子や、推しの香川 さんのレシピを参考にして作った料理画像、飼っているカブトムシの事が載っていた。
6月に入って、カブトムシの幼虫が20匹以上大人になったらしく、湊世さんは里親になってくれる人を探し始めた。
俺の実家は田舎だから、カブトムシが裏山や庭の木にいるのは当たり前。
友達とカブトムシを捕まえたり、幼虫を育てたり…と、『夏と言えばカブトムシ』な生活を送っていた。
懐かしい気持ちになって里親を名乗り出た。
秀臣さんと一緒に湊世さんの家までカブトムシを迎えに行った。
湊世さんは夫夫 で俺たちを迎えてくれた。
SNSでもラブラブな感じだったけど、実際に会ったらお互いの事が好きで好きでたまらない!って感じの仲良しぶり。
いいなぁ、新婚さん。
秀臣さんも実際に自分の作品を身につけてくれる湊世さんの生の声を聞いて幸せそうにしていた。
今度は夫夫で家に遊びに来てもらう約束もした。
カブトムシを飼うのは初めての保科家のメンバーは興味津々。
柊吾 は暇を見つけては飼育ケースをのぞき込んでいる。
秀臣さんは張り切って大きな飼育ケースや、高級なカブトムシゼリーを買ってきた。
麻斗 さんは毎日カブトムシゼリーをセットしたり、飼育ケースの掃除をしたり。
名付け親は柊吾。
黒っぽいオスが『黒糖 』で、ちょっと茶色っぽいメスが『甘栗 』
黒糖と甘栗のおかげでさらに会話も増えたし、皆で仲良く小さな生命を見守るのも貴重な経験。
この夏もきっと思い出いっぱいの楽しい夏になる。
俺は、香川 さんがSNSで紹介していた洋風アレンジのオシャレそうめんを作りながら心を弾ませていた。
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