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第10章 第29話

「そうですか…。よかったです」 少しホッとした様子の香川(かがわ)さん。 早く皆に話して、その様子を香川さんに伝えて安心してもらいたい。 「俺…香川さんの恋人にしてもらえて本当に嬉しいです。最初からワガママばかりの俺だけど、よろしくお願いします」 「こちらこそよろしくお願いします。私も嬉しいですよ。話し辛い事も正直に話してくださった環生(たまき)さんをますます好きになりました」 自分の望みを押し通したのに、そんな事言ってもらえるなんて嬉しい。 ついつい顔がニヤけてしまう。 「環生さん。これはお願いと言うか…こうだったらいいなっていう希望なんですが…。この先一緒に過ごす夜のお風呂は私と入って欲しいんです。1日の疲れを癒す特別な時間を、大好きな環生さんと過ごしたいと思っています」 香川さん…お風呂は一緒派なんだ…。 裸になるのは恥ずかしいけど、仲良く過ごすのも楽しそう。 お互いの体を洗ったり、くっついて湯船に入ったり。 おしゃべりするのもいいな。 もしかしてキスやエッチな事もするのかな…。 『環生さん、その可愛い唇にキスしてもいいですか?』 『は、はい…』 『恥ずかしがる環生さんも可愛いですね。今夜はたくさん恥ずかしがらせてしまいたくなります』 『そんな…。恥ずかしいけど…嬉しいです…』 裸のまま抱き合って、エッチなキスをする妄想をしたら、体の奥が甘く疼いた。 どうしよう…キスしたくなっちゃう…。 「…環生さん?」 「あっ…ごめんなさい。考え事しちゃって…。お風呂…一緒に入りたいです」 さすがにエッチな妄想をして欲情しかけたなんて言える訳がない。 少しの気まずさを感じながらそう伝えると、香川さんは嬉しそうに微笑んだ。 「では、一緒にお風呂に入る親密な関係になる前に、環生さんの家とご実家へご挨拶に行きましょう。お家の人も心配でしょうし、私も環生さんの大切な人に会ってみたいです」 その言葉を聞いて胸がキュンとした。 香川さんは本当に俺を大切に想ってくれるから。 皆と一緒にいる俺を丸ごと愛してくれてるって確信したから。 俺と同じくらい、皆の事も大切に思ってくれたから。 会った事もない俺の両親を思いやってくれたから。 「ありがとうございます。皆も喜ぶし、安心すると思います」 「では、今日お家に帰ったら皆さんの予定を聞いておいてくださいね」 「はい」 両親に恋人を紹介するのは初めて。 保科(ほしな)家に住む前に同棲していた彼は、俺の両親に会いたがらなかったから。 緊張するけど、香川さんの気持ちが嬉しい。 俺も大切な香川さんを家族に紹介したい。 浮かれ気分でコクコクとうなずいた。

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