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第11章 第4話side.柊吾

〜side.柊吾(しゅうご)〜 その夜の事。 俺は風呂上がりにリビングのソファーで刑事ドラマを見ながら、環生(たまき)の事を考えていた。 環生、今日はどこで寝るんだろうな…。 さすがに彼氏ができたばかりの夜は1人で寝るよな…。 こんな事になるなら、昨日もっと環生を抱きしめて眠ればよかった。 好きな男とのデートの前夜に俺に抱かれるのも…と、遠慮なんかせず環生を抱けばよかった。 別れでもしない限り、もう俺だけの環生になる事はないんだよな…。 そんな事を考えていたら、いつの間にか風呂上がりの環生が隣にいた。 いつものように俺の隣に座って、俺に寄りかかりながらスマホを触る。 きっとあの男と連絡でも取ってるんだろう。 やり取りが落ち着いたら土産を渡そうと、ポケットに忍ばせたまま環生の様子をうかがっているとニヤニヤしたり、恥ずかしそうにしたり。 もっと可愛い環生を見たいと思ったけど、スマホをのぞいていると勘違いされたくなくてチラ見する程度で我慢した。 ドラマも終盤に差し掛かった頃。 環生が体重をかけてきたから視線を移す。 環生はスマホを持ったまま、俺に身を預けて寝落ちしていた。 ウトウトとかそんな可愛いレベルじゃなくて、本気で寝ている。 きっと疲れたんだろう。 「おい、環生。寝るなら布団で寝ろよ」 声をかけると、何かしらの反応はあるが起きる気配はない。 スヤスヤと気持ちよさそうに寝息を立てている。 「土産…渡しそびれたな…」 渡そうと思っていた土産は、小さな木彫りのぶどうのブローチ。 ぶどうに描いてあった顔が、フニャッと笑った環生の顔に似ていたから思わず買ってきた。 俺からより…あいつからもらった方が嬉しいよな…。 そう思いながらまつ毛にかかった前髪に触れる。 これからはこの前髪に触れるのは俺じゃない。 環生は今のままでいいって言ってたけど、普通の感覚だったらいい訳がない。 環生には恋人がいるんだ…。 そこはきちんと線引きするぞ…と、心に誓う。 恋人できたてホヤホヤの環生を俺のベッドに運ぶのも違う気がするから、環生の部屋へ連れて行く事にした。 とりあえずソファーに環生を寝かせて、部屋に布団を敷いて戻ると環生は目を覚ましていた。 「環生、起きたのか。布団敷いてきたぞ」 立てるか…と、側へ行くと、環生がぎゅっと抱きついてきた。 「やだ、柊吾の部屋がいい。柊吾と寝る」 寝ぼけて甘えてくるのが可愛くて、決心が揺らぐ。 まぁ、寝るだけだし手を出さなければいいか…。 いきなりひとりぼっちは、環生も淋しいだろう。 それに…やっぱり俺は環生と一緒に眠りたい。 俺は可愛い環生のおねだりを断る事ができなかった。

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