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第12章 第13話side.柊吾
〜side.柊吾 〜
「柊吾…?」
不安そうな小さな声で俺を呼ぶ可愛い環生 。
俺と目が合った途端、泣きそうな顔をする。
原因は俺の複雑な表情だ。
本当なら、環生との時間は楽しくて仕方ないはずなのに。
環生がアイツの元から俺の手の届く範囲に帰ってきた事が本当に嬉しかった。
俺の側で安心しきった顔で眠っている姿を見たら、たまらない気持ちになった。
気持ちが抑えられなくなって、病み上がりの状態で環生を求めた。
『また熱が出るからだめ』って叱られると思っていたが、予想以上に環生も乗り気だった。
嬉しそうにキスをねだる環生。
早くいつもみたいに体を繋げて、今だけは俺の環生だと実感したい。
環生に気持ちいい思いをさせてやりたい。
そう思うのに体の準備をするのをためらう自分がいた。
最初はひっそり閉じたままの環生の蕾。
それをじっくり柔らかくして、俺を受け入れるための準備をしていく過程が好きだ。
俺に身を任せて感じていく環生を見るのは至福の時間だ。
数え切れないほど環生を抱いてきたから、環生の蕾の事なら世の中の誰よりも詳しい自信がある。
だから今、環生の蕾に触れたら環生がアイツに抱かれたかどうかがわかる。
実家から帰ってきた環生は眠そうにしていた。
緊張してたから…と言ってたが、もしかしたらイチャイチャしていて睡眠不足なのかも知れない。
環生が望むなら、いつアイツとそういう関係になってもかまわない。
今でも固定メンバーは秀臣 、麻斗 、父さん、藤枝 さん、俺…と、手当たり次第だ。
今さら1人増えたところでどうと言う事もない。
お互いに環生といつ何をしたかは言及しないし、環生も口にしないのが俺たちの暗黙のルール。
それで今まで上手くやってきた。
だから、環生がアイツにいつどのタイミングで抱かれたのかまでは知りたくない。
環生の口から聞く気にもなれないし、気づいてモヤモヤするのも避けたい。
できる事なら知らない間に済ませて、何事もなく振る舞って欲しい。
「体…辛いの?」
やっぱり止めておく?と、環生が聞く。
「いや、止めない」
「本当?心配だよ…」
戸惑いを隠せない環生の瞳。
全部俺のせいだ。
「ごめんな。環生がアイツに抱かれたのか…。それを知るのが怖くて触れられなかった」
そっと頬を撫でると、環生が納得したような顔をした。
「…抱かれてないよ。キスもしてない」
頬に触れる俺の手に頬ずりしながら小さな声でそう言った。
「本当か…?」
「うん、本当。柊吾には隠し事しないよ。柊吾は俺の気持ちも体も知り尽くしてる博士だから嘘も言わない」
だから安心して…と、環生が微笑む。
環生とアイツの進捗状況なんて知りたくもないと思っていたのに、まだキスもしていないと聞かされてどこかホッとする自分がいた。
何だよ、俺…。
知りたいのか知りたくないのかどっちなんだ。
何がしたいんだ…。
そんな俺の戸惑いを察した環生は、誘うような表情で俺の手を蕾に導いた。
「柊吾がほぐして…。俺のお尻マスターの柊吾にして欲しいよ」
環生は自分の膝を抱えるようにして、恥ずかしそうに脚を開いた。
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