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第12章 第19話

〜side.柊吾(しゅうご)〜 「…っ、大丈夫じゃないよ…。柊吾…」 俺が作った焼きそばを大切そうに抱えながら人目も気にせずポロポロ涙をこぼす環生(たまき)。 ほらみろ、だから待ってろって言ったんだ。 こんなに可愛い環生が1人でフラフラしてたら、浮かれた奴らに言い寄られるに決まってる。 断り切れずに怖い思いをするに決まってる。 いい加減、自分の可愛さを自覚しろよ…。 何度も何度もそう言ってるのに、環生は俺の話を聞こうとしない。 『柊吾は大げさだよ…』って笑うけど、ああいう親しみやすい雰囲気で、抵抗しない善人タイプの環生みたいなのが一番襲われやすいんだ。 やっぱり環生を行かせるんじゃなかった。 心配で追いかけてきたら、早速チャラそうな男2人に囲まれていた。 怯えた様子の環生。 断り切れずに困り顔でうつむいている。 悪い予感は的中した。 今すぐ助けてやらないと。 俺の環生に気安く声をかけるなんて何考えてるんだよ…。 あっ、勝手に肩を抱くな! カッとなって、大声で環生を呼ぼうとした時だった。 いきなり環生がそいつの手を振り払った。 焼きそばが入った袋をぎゅっと抱えて、叫んだ。 「す、好きな人がいるから触らないでください。フランクフルトもいりません」 あの流されやすい環生が、毅然とした態度で断った事に驚いた。 今までだったら半泣きで誰かの助けを待っていたのに。 『好きな人』って、アイツの事だよな…。 あんな勇気が出せるほどアイツの事が好きなんだ…。 アイツの存在が環生を変えた。 もう俺の助けはいらないんだな…。 環生に拒絶された気持ちになって、胸がぎゅっと苦しくなった。 チャラ男達を撃退した環生は、ヨロヨロと広場のベンチの方へ。 ダメだ、あのまま放っておいたら環生は泣くだろう。 また変な奴が寄ってくるかも知れない。 アイツがいない時は、俺がアイツの代わりに環生を守るんだ。 俺の存在意義はそこにある。 今すぐ姿を見せて安心させてやりたい。 そのつもりで環生に声をかけた。 「…でもね、俺…頑張ったよ…」 いつもなら俺の胸に飛び込んできて俺の慰めを待っているのに、今日の環生は自分のハンカチで涙を拭いた。 今までだったら環生を守るように抱きしめて涙を拭っていたのは俺だった。 泣き止むまでおでこや瞼にキスをして、背中をさするのは俺の役目だった。 でも、今はもう…自己完結できるんだな…。 環生はアイツと付き合うようになって少し強くなった。 結婚する自覚や、愛されている自信が環生をそうさせたのかも知れない。 いい事なのに、環生の変化を喜べない俺。 泣きたいのは俺の方だった…。

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