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第12章 第21話
「環生 さん、少し休憩しましょうか」
近くのカフェでカフェ・オ・レと手のひらより大きなソフトクッキーをテイクアウトして、眺めがいいベンチに座った。
香川 さんは抹茶とホワイトチョコレート、俺は期間限定のマロンとミルクチョコレートのクッキー。
割るとボロボロに砕けてしまいそうだから、そのままかじりついた。
マロンのいい香りとチョコレートの甘みが好きな感じ。
「環生さん、こちらも食べてみませんか?美味しいですよ」
「いいんですか?」
「もちろんです。好きなだけどうぞ」
よかったら俺のも食べてみてください…と伝えてクッキーを交換した。
どこから食べようかな…。
香川さんがかじった所を食べたら間接キス。
ぜひともそこから食べたいけど、キスしたい欲求全面出ししてるみたいかな。
でも、キレイな所を食べるのも申し訳ないし…。
「遠慮せずキレイな所を食べてください」
「はい…いただきます」
一口かじると抹茶のいい香り。
こっちも美味しい…。
「環生さん、唇の端にクッキーのかけらがついていますよ」
私が取りましょう…と、香川さんはハンカチを取り出した。
いつもアイロンのかかった清潔なハンカチを持っている香川さん。
さり気なく洋服とコーディネートしてるからオシャレだなぁって思う。
拭いてもらえるのを待っていたら、香川さんの顔が近づいてくる。
驚いて身動きできない俺の唇の端に香川さんの唇が触れた。
唇でかけらを取ってくれるなんて想像もしてなかった。
キス…みたい…。
「取れましたよ」
「あ、ありがとうございます…」
香川さんの唇の温もりを思い出したら、急に恥ずかしくなって頬が火照る。
どんな顔をしたらいいかわからない。
でも…もう1回して欲しい。
できれば唇に。
俺は香川さんとキスがしたい。
「すみません。ハンカチで拭くつもりだったんですが、環生さんの唇が可愛らしくて…」
いつもより頬が赤い香川さん。
それって…俺とキスしたくなったって事…かな…。
そう思ったら今度は心臓がバクバクいい始めた。
「私は今…環生さんとキスをしたいと思っています」
愛おしそうに俺を見つめる眼差し。
そんなストレートに言われると照れてしまうけど、その気持ちが嬉しい。
「俺も…したいです」
恥ずかしくて小さな声で答えると、香川さんが嬉しそうに微笑んだ。
クッキーを持っていてくれますか?と、手渡されたクッキー。
うなずいて受け取ると、香川さんが俺の頬に触れた。
香川さんの優しい温もり。
キスの…合図。
ドキドキしながら瞳を閉じた。
うぅ、緊張する…。
ついつい手に力が入ってしまって、持っていたクッキーが砕けた気がする。
「好きですよ、環生さん」
初めて触れた大好きな香川さんの唇は、あったかくてほんのり抹茶の香りがした…。
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