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第12章 第22話
夢にまで見た香川 さんとのキス。
香川さんの唇…あったかい…。
恋人になれた事だけでも驚きなのに、そんな憧れの香川さんとキスまでしちゃったなんて信じられない。
そっと離れていく唇が淋しくて、追いかけるように唇を寄せた。
一瞬驚いた顔をした香川さんだったけど、優しく微笑んで受け入れてくれた。
「俺も…香川さんが大好きです」
キス…嬉しいです…と伝えると、今度は抱きしめられた。
「私も環生 さんが大好きです。不思議ですね、唇を重ねたら、さらに愛おしさが増しました」
もう一度いいですか…?と、頬に触れる優しい手。
キスをする度に好きになってもらえるなら何度だってして欲しい。
一晩中でも、唇が腫れてしまってもいい。
俺からもして、もっと好きになって欲しい。
『大好き』な気持ちを伝えたい。
そのまま何度か触れるだけのキスをした。
ドキドキして、その度に体に力が入ってしまったから、手の中のクッキーは砕けて一口サイズになってしまった。
食べやすくなりましたね…と、香川さんがクッキーをつまんで俺に食べさせてくれた。
お返しに俺も香川さんの口元へ。
香川さんは俺の指先にキスをしてから、クッキーを食べた。
「環生さん、よかったら私の事を下の名前で呼んでくれませんか?」
「そんな…急に恥ずかしいです…」
「先の話にはなるんですが…。将来結婚して、環生さんが私の苗字になる事があったら…環生さんも『香川さん』になるんですよ。同じだと紛らわしいでしょう?」
結婚、同じ苗字…。
まだ具体的に先をイメージしてなかったら、ちょっと戸惑う。
制度的には別姓でも、どちらかの苗字でも好きな方を選べる。
俺が『香川 環生 』になる事も、香川さんが『相川 恭一 』になる事もあるんだ…。
香川さんと一緒にいたい一心で結婚を決意したけど、もっとちゃんと将来の事を考えないといけないな…と思った。
「名前…上手く呼べたら…ご褒美にキスしてください」
「環生さんに名前を呼んでもらえて、キスまでさせてもらえるなんて、まるで私へのご褒美ですね」
その笑顔を独り占めできる事も素敵なご褒美。
ちょっと照れたような優しい笑顔が大好き。
「きょ、恭一さん…」
「はい。環生さんの恭一ですよ」
そっと右頬に触れる柔らかな唇。
贅沢すぎる俺へのご褒美。
うひゃあ、恥ずかしい…。
「環生さんの可愛い声で呼ばれると、自分の名前に付加価値がついたように感じますね。もう一度呼んでくれませんか?」
「…恭一さん…」
ご褒美のキスは左頬へ。
唇にもして欲しくてもう一度呼んだら、今度は鼻の先だった。
「大好きです。きょ…恭一さん」
「…困りましたね。環生さんが可愛らしくて私の心臓がどうにかなってしまいそうです」
頬を染めた恭一さんがプレゼントしてくれた唇へのご褒美。
さっき食べたクッキーにハチミツとチョコレートソースをトッピングしたような甘い甘いキスだった。
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