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第13章 第1話
「ええっ、すごい!急展開…!」
リビングに響く湊世 さんの声。
今日は友達の湊世さんのお家にお邪魔して、一緒にお昼を食べる約束をしてる日。
いつもお互いに家事を頑張ってるから、たまには美味しい物を食べながらゆっくりおしゃべりしようって話になって、ちょっと豪華な中華の点心セットをお取り寄せした。
湊世さんは保科 家の皆と体の関係がある俺のの事も受け入れてくれる優しい人。
恭一 さんのファンでもある湊世さんには、ちゃんと報告したかった。
恭一さんは人前に出る仕事をしてる人だから、彼との事は誰にでも話せる訳じゃない。
エッチな事をしてる柊吾 たちにも話しづらい。
信頼できる湊世さんと思いっ切り恋バナをしたかった。
「驚いた…。この前会った時は全然そんな感じじゃなかったのに。少しの間に婚約してご両親の挨拶まで済ませたなんて」
「俺も驚いたよ…。まさかこんな流れになるなんて思ってなくて…」
「ご縁のある人とはトントン拍子に事が運ぶのかもね。環生 さん、おめでとう」
自分の事みたいに嬉しい…と、微笑んでくれる湊世さん。
「ありがとう、湊世さん」
「こちらこそ。大切な事、話してくれてありがとう」
お茶のおかわりいれるね…と、湊世さんがキッチンへ立っていく。
お礼を伝えてふとリビングの方を見ると、ソファーに毛糸と編みかけのマフラーが入ったカゴが置かれていた。
「湊世さん…編み物するの?」
「あ…それね、紘斗 さんへのクリスマスプレゼント。紘斗さんのリクエストで、今…マフラーを作ってて…」
初めてだから、なかなか上手くいかなくて…と、恥ずかしそうな湊世さん。
いいなぁ、ラブラブの新婚さん。
手編みのマフラーを欲しがるなんて、紘斗さんは本当に湊世さんの事が大好きなんだなぁと思う。
湊世さんも大好きな紘斗さんのために愛情を込めて丁寧に編み上げていく。
愛し合う2人が尊い。
紘斗さんと湊世さんは俺の理想の推し夫夫 。
俺たちも2人みたいに仲良く愛を育んでいきたい。
「そうだ、環生さんも編んでみない?お仕事で離れ離れでも、環生さんを感じられるアイテムがあったら香川 さんも嬉しいんじゃないかな…」
「ええっ、俺が…?」
編み物は子供の頃、おばあちゃんに習った事がある。
最初は一本の毛糸なのに、だんだん編み上がって形になっていくのが面白かった。
上手ではなかったけど、おばあちゃんの部屋でおしゃべりをしたり、おやつを食べたりしながら一緒に編んだ楽しいひと時を思い出した。
どうしようかな…。
興味はあるけど、手編みにはちょっと悲しい思い出があるから、何となく避けてきた。
でも…恭一さんは喜んでくれるかな…。
離れてる時でも、俺を思い出してくれるかな…。
「今度会った時…恭一さんに聞いてみようかな」
「うん…そうだね。もし挑戦するなら教えてね」
環生さんと一緒だと頑張れそう…湊世さんはそう言っていい香りの中国茶をいれてくれた。
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