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第13章 第15話side.麻斗
〜side.麻斗 〜
「麻斗さん、入ってもいい?」
「いいよ。おいで、環生 」
「やったぁ」
ベッドに座ってお店のブログを書いていたら、お風呂上がりの環生がやってきた。
1月も半ばになってお店も少し落ち着いたから久しぶりの連休。
連休の夜の楽しみはこうやって環生が泊まりにくる事。
環生と過ごして日々の疲れやストレスから解放される。
「…お仕事中だった?」
「今、ブログを書いていて…。ごめんね、環生。あと少しだけ待ってくれる?」
「うん、ゆっくりでいいよ。でも…麻斗さんにくっついていい?」
「いいよ、おいで」
ベッドに乗ってきた環生の肩をそっと抱き寄せると、環生は嬉しそうに俺の膝に頭を乗せてベッドに横になった。
今日のパジャマは秀臣が作った白いうさぎの着ぐるみタイプ。
もこもこ素材がよく似合っていて可愛らしい。
「麻斗さん、気にせず続けてね」
環生はそう言うと、スマホを触り始めた。
それぞれ他の事をする時もくっつきたいだなんて、環生は本当に甘えん坊だ。
香川 さんも環生のこういうところを愛おしく思うんだろう。
柔らかな髪を撫でながら、片手でブログを書きあげた。
「お待たせ、環生」
「うん…」
返事はするけど、視線はスマホを見つめたまま。
真剣に何を調べているんだろう。
「何か調べてるの?」
「うん…これ…」
環生が見せてくれたスマホの画面は、VIOの永久脱毛のページだった。
「環生…脱毛に興味があるの?」
「うん…ちょっとだけ。恭一 さんの前で脱ぐ時…キレイな方がいいのかな…と思って」
どちらかと言えば環生は体毛が薄い方。
脇毛もモジャモジャ生えている訳でもないし、VIOだってほとんど気にならない。
今まで体毛を気にしているそぶりもなかったのに。
「どうして急に?」
「これ見て…」
環生が見せてくれたのは恋する若い女の子のための情報アプリ。
上品に見えるメイクの仕方や男受けしそうな洋服、料理やお菓子のレシピ、愛されるための振る舞い方などが紹介されている。
特に参考にしなくても環生は充分に可愛いし愛される存在なのに。
無理に他人の基準に合わせようとしなくていいのに。
その中でムダ毛についての記事があった。
『セックスの時に体毛が濃くて萎えた』とか、『恋人にはツルツルの肌でいて欲しい』とか全体的に脱毛を勧めるような男性のコメントが並んでいる。
体毛の有無は個性の一つ。
それを理由に気持ちが離れたり、恋人の意思を無視して自分の好みを押しつけたりするのは本当の愛じゃないと思う。
そんな相手と付き合っても幸せにはなれないはず。
でも、環生はそれだけ香川さんの事が好きなんだろう。
大好きな人のために、よりキレイでいたいと思う環生の気持ち。
恋の力は偉大だ。
「俺…女の子と体の関係になった事がないから、体毛が生えてて萎える気持ちがわからなくて…」
本当に必要なのかな…と、困り顔をする環生。
情報を丸ごと鵜呑みにしていない事に安堵した。
「麻斗さんはどう思う?」
「…俺は環生に体毛が生えていても生えていなくても何も変わらないよ。環生がどうしても…って言うなら止めないけど、俺は自然のままの環生が可愛いと思うよ」
おいで…と声をかけると、対面座位みたいに正面から俺の膝にまたがった。
「本当?お尻の穴の近くとかに生えてても平気?フェラした時に口の中に毛が入っちゃっても嫌じゃない?それでもエッチな事したいって思う?」
随分と必死な様子。
…という事は、『まだ』香川さんの前では脱いでいないんだな…と思う。
先日、泊まりがけで環生の実家に行ったけど、そこまでの進展はなく、今は彼の前で脱ぐ日のために準備をしている段階なのか…。
そんなプライベートな事まで把握する必要はないけれど、やっぱり気にはなる。
環生には幸せになって欲しいから。
「俺は全然気にならないよ。体毛だって可愛い環生の一部だからね」
抱き寄せて背中をトントンすると、すぐにスマホから手を離して甘え始めた。
環生を可愛がりながら、これでこの話も終わりかな…と思い始めた頃だった。
「…麻斗さん、お願いがあるの」
「いいよ、どうして欲しいの?」
「あのね、俺のお尻…チェックして欲しいの。麻斗さんが見てどんな感じなのか教えて」
恥ずかしそうにしながらも、環生は真剣な表情で俺を見た。
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