351 / 420
第13章 第25話
「やぁ、環生 。元気にしていたかい?」
「せ、誠史 さん。どうして…?」
誠史さんが連絡もなく帰国するのはいつもの事。
今さら驚く事でもないんだけど、本当に前触れがないから結局毎回驚いてしまう。
「環生に会いに来たに決まっているだろう。ただいま、環生」
「おかえりなさい、誠史さん」
ぎゅっと抱きしめ合っておかえりなさいのキスをする。
これは環生へのお土産だ…と、大きな紙袋を丸ごとプレゼントしてくれた。
リビングのソファーで熱い緑茶を飲みながら、お土産の開封式。
美味しそうなチョコレートやショートブレッド。
ジャムやはちみつ、オシャレな缶に入った紅茶、手のひらサイズの可愛いテディベアのぬいぐるみ。
「この子、可愛い。ありがとう、誠史さん」
誠史さんが買ってくれたから、名前は『セイちゃん』にしようかな。
それとも『保科 』の名字からとって『ほっしー』がいいかな…。
「昼間はいつも1人で留守番しているのかい?」
「ううん、今日は特別で…。俺もさっきまで出かけてたし…」
「そうか。淋しそうな顔をしていたから気になってね」
「あっ、えっと…。それは別件で…」
詳しく言うのは躊躇われて思わずうつむいてしまう。
『恭一 さんに抱いてもらえなくて淋しかった』って言葉にしたら、余計に辛くなる。
「環生がよければ来るかい?」
両腕を広げて歓迎モード。
そんな事されたら甘えたくなってしまう。
「…いいの?」
「あぁ、もちろんだ」
可愛い環生…と、包み込むように抱きしめられる。
俺が求める前に与えられる温もり。
あったかくて、気持ちいい…。
「嬉しい…誠史さん」
俺からも抱きついて甘えると、すぐに重なる唇。
いくら2人きりでも共有スペースでイチャイチャしたらだめってわかってるのに、止められない。
満たされなかった淋しい気持ちを埋めて欲しい。
久しぶりに会えた誠史さんを感じたい。
「誠史さん、もっとして…」
「いくらでもしよう、可愛い環生」
夢中で誠史さんの唇や舌を味わっていると、玄関のドアが開く音がした。
誰か帰ってきたんだ…。
慌てて離れようとしたけど、誠史さんは全然離してくれない。
それどころか、俺をソファーに寝かせて覆いかぶさってきた。
どうしよう…。
リビングでセックスしてるって誤解されちゃう…。
心臓がバクバク音を立てるのを聞きながら、誠史さんの唇を受け入れる。
「あぁ、すまない。夕方まで隣にいる」
誠史さんと俺の濃厚なキスシーンを目撃してしまった秀臣 さんは、気まずそうに出て行ってしまった。
「さぁ、これで邪魔者はいない」
続きをしよう…と、微笑む誠史さんは確信犯。
俺とイチャイチャしてるところを見せて、皆を追い払うつもりなんだ。
「や…。やっぱりだめ…。もうすぐ柊吾 も帰ってくるから…」
見られたのが秀臣さんでよかった。
柊吾に見られたら、面倒な事になるに決まってる。
誠史さんが帰った後、嫉妬した柊吾に抱き潰される未来が見える。
「秀臣に見られるのはよくて、柊吾は嫌なのかい?」
「だって…色々大変なの。誠史さんが帰った後の俺のお尻と睡眠時間を守るためなの。だからお願い」
俺の必死なアピールに、ただならぬ気配を感じ取った誠史さん。
『残念だが、続きは夜にしよう』と囁いて名残惜しそうに俺を解放してくれた。
ともだちにシェアしよう!