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第13章 第28話side.誠史
〜side.誠史 〜
「どうして…?誠史さん…」
どうして頭を撫でるだけなの?と言いたそうな淋しそうな表情。
それもそのはず。
いつもなら環生 がねだったらすぐに抱きしめてキスをしていたから。
「それは環生の本当の気持ちかい?恋人と上手くいっていないからと言って、ヤケになってはいけないよ」
本来なら環生に求められて喜ばしい限りだが、気持ちを隠しながら諭した。
一時の感情に流されて俺に身を任せたら、優しい環生はきっと後悔するだろう。
それだけは避けたいと思った。
「そんな事ないよ。誠史さんにだから抱いて欲しいって思ったんだよ」
それでもだめなの?と、可愛い事を言って甘えようとする環生。
昼間からさんざん環生を抱きしめてキスをしてきたが、これ以上先へ進むのは気が引ける。
「…もしかして、恭一 さんの事…?」
「そうだなぁ。環生は彼と生きていくと決めたんだろう?」
俺の言葉を聞いた環生は、ホッとした表情を浮かべた。
「恭一さんの事なら大丈夫。俺ね、ちゃんと話したの。これからも保科 家の皆とエッチな事したいって。恭一さんは俺の日常をそのまま受け入れてくれたから、今まで通り誠史さんとイチャイチャできるの」
恋人ができたと電話連絡があった時も、俺に甘えたいと言っていた環生。
どうやら本気だったようだ。
それを主張した環生も環生だが、それを丸ごと受け入れた相手も相手だ。
やはり今時の若者は何を考えているのかよくわからない。
ジェネレーションギャップを感じる俺に、環生は相手の考え方や、恋人生活が始まってからも秀臣 たちと体の関係がある事を話して聞かせた。
それは全部環生が望んだ事だとも。
「…にわかには信じられないが、環生の話が本当なら、こんなに幸せな事はないなぁ。前向きにあきらめていたのに、気兼ねなく環生に触れられる」
「誠史さん、本当?帰って来た時、いつもみたいに俺に覆いかぶさったりエッチなキスしたりしたのに…?」
「一応俺の中で線引きはしていたんだ。抱きしめるのと、キスは挨拶だ…と。それから、着ている物で隠れてる部分には無闇に触れない…と」
帰国の際、俺は自分の中でルールを決めた。
そうでもしないと、歯止めが効かなくなりそうだった。
だが、全く触れられないのも耐え難い。
挨拶だと言えば、環生に触れられると思った。
「誠史さん、俺を遠ざけたいのか、遠ざけたくないのかどっちなの…」
「遠ざけたくないに決まっているだろう。だが、環生の枷になりたくはないんだ」
俺の本心を知った環生は嬉しそうに微笑む。
ちょっと得意げな表情をして。
「ありがとう、誠史さん」
俺、幸せだよ…と、頬に触れる柔らかな唇。
小さなお尻を抱き寄せて膝に乗せると、下半身を押し当てるようにして腰を揺らし始めた。
「このまま抱いて…誠史さん」
甘えた声と、誘うような濡れた瞳。
俺の手を取った環生は、ルームウェアの裾を捲って胸に導いた。
「本当に…いいのかい?」
「うん…。もう待ち切れない」
早く…と、せがむ環生が愛おしい。
華奢な体を抱えるようにして布団に寝かせると、満足そうに微笑んで瞳を閉じる。
昼間の続きをするように、ゆっくりと唇を重ねた…。
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