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第14章 第1話side.柊吾

〜side.柊吾(しゅうご)〜 「早いね、もう4月も半分過ぎちゃった」 「あぁ、そうだな…」 夕方のニュースを見ながら晩ご飯の支度をする環生(たまき)がつぶやく。 今夜はタケノコの炊き込みご飯と茶碗蒸し、春野菜の天ぷららしい。 大学から帰って来た俺は、環生が焼いた抹茶と小豆のパウンドケーキを食べながら相槌を打つ。 環生との暮らしが楽しくて、毎日があっという間に過ぎていく。 俺は進級をして、大学4年生になった。 周りは就職活動の真っ最中だが、俺は弁護士になるために法科大学院に進む予定でいる。 環生の恋人は相変わらず忙しくて、時々数時間のデートを繰り返すだけ。 あの日以来、一度も泊まりには行っていない。 最初は淋しそうにしていた環生も、少しずつ慣れてきたようだ。 アイツを待つのも、アイツの生活に合わせるのも控えるようにして、自分主体で生きる事にしたようだ。 アイツと付き合う前とさほど変わらない生活。 環生は日替わりで、秀臣(ひでおみ)麻斗(あさと)や俺の寝室を転々としている。 「ねぇ、柊吾…」 「ん?どうした、環生」 コーヒーのおかわりを持ってきた環生の可愛い甘え声。 とろんとした瞳で俺を見つめる。 「今夜…いい?」 「あぁ」 欲求不満なのか、最近環生の抱いてアピールがすごい。 『暖かくなってきたら、急に性欲が増しちゃって…』と、発情期を迎えた猫か…と思うような事を言う。 いやいや、環生は年中発情してるだろ…とツッコミたくはなるが、エロエロモードの環生は最高に可愛い。 俺の愛撫でとろける体も、いつもよりトーンが高くなる声も、淫らな表情でキスをねだるのも、俺の腰に脚を絡めてぎゅっと抱きついてくるのも、全部可愛い。 嬉しそうに求められると、もっと環生を悦ばせてやりたくなって、ありとあらゆる方法で環生を可愛がる。 環生は素直に反応を示すから、愛し甲斐もあるし、俺も満たされた気持ちになる。 俺のベッドに潜り込む日限定で、年中発情期だといいと思うほど、俺も環生との時間が楽しみだ。 早く夜になればいい。 環生の手を握りながらそう思った。

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