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第14章 第6話

5月に入って、世の中はGWになった。 道端のツツジが色鮮やか。 ベランダの紫陽花も急成長。 湊世(みなせ)さんから譲り受けたカブトムシの『黒糖』と『甘栗』の子供たちも次々と蛹になった。 GWと言っても柊吾(しゅうご)の大学が休みになったくらいで、さほど俺の生活は変わらない。 恭一(きょういち)さんはGWの親子向けイベントで忙しそうだからデートはお預け。 そんな俺を気づかってか、連休をとった麻斗(あさと)さんがデートに誘ってくれた。 生活の全てを恭一さんに合わせると苦しくなるってわかったから、会えない時は自分の生活や時間を大切にしてる。 だから麻斗さんとのデートもすごく楽しみ。 今日のデートは潮干狩り。 道具はレンタルだから手ぶらで楽しめて、近くの温泉旅館での入浴がセットになったプラン。 前日から迷子とナンパ防止に…と、カラフルなお揃いのTシャツと帽子とウォーターシューズを買いに行ったり、とれたアサリの食べ方を相談したり。 準備も、当日のドライブも楽しくてあっという間に海へ到着。 「海だー、気持ちいい」 肺いっぱいに海風を吸い込む。 海のにおいだ…。 山育ちだから、海は珍しい。 天気もよくて、目の前には広い海と空。 どこを見渡しても一面の爽やかブルー。 波の音も気持ちいいな…。 こうやって自然に囲まれるの、いつぶりだろう…。 そんな事を思いながら、昨日下調べしたアサリがとれそうなスポットへ。 子連れや若者グループ、カップルで大賑わい。 皆楽しそうに潮干狩りをしていた。 「この辺りにしようか、環生(たまき)」 「うん、たくさんとれるかな」 「環生の食べたいボンゴレのためにたくさんとろうね」 どんな時でも麻斗さんは優しい。 ずっと俺をリードして見守っていてくれる感じ。 風上にしゃがんで風よけになってくれたり、大きなアサリを見つけると、そっと俺のバケツに入れてくれたり。 面白い模様のアサリを見つけてはしゃぐ俺を見て微笑む麻斗さんの眼差しは本当に温かくて。 大切に想ってもらえてる事が嬉しくて、ドキドキして…。 あまりに見つめられると恥ずかしいから、夢中でアサリを探すふりをする。 「環生は可愛いね」 人前じゃなかったらキスしたいよ…なんて囁かれて頬が火照る。 「もう、麻斗さん」 「ごめんね、環生のそういうところも可愛いよ」 そんなやり取りを繰り返しながら、俺たちは潮干狩りを楽しんだ。

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