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第14章 第13話
「湊世 さん…驚かせてごめんね。入ってもいい?」
「う、うん…」
部屋に入って湊世さんの側に座る。
湊世さんは頬を染めて恥ずかしそうにうつむいていた。
「本当に…柊吾 さんと恋人みたいなキス…するんだね」
「うん…」
「話には聞いてたけど、目の当たりにしたらドキドキしちゃった」
邪魔してごめんね…と謝ってくれる湊世さん。
謝るのは驚かせた俺の方だ。
「紘斗 さん、大丈夫だった?」
「それが、その…」
甥っ子と過ごすために実家へ行っていた紘斗さん。
でも、甥っ子の父親が実家に顔を出したらしく、紘斗さんに懐いていた甥っ子もパパへ真っしぐら。
仕方なく自宅へ帰って来たら湊世さんがいなくて、慌てて電話をしてきたらしい。
湊世さん、きっと家に帰りたいんだ。
でも、俺たちに気をつかって言い出せずにいるんだ。
「湊世さんのしたいようにしてね。俺とはいつでも話せるから気にしないで」
「…ありがとう、環生 さん。…無理矢理押しかけた上にワガママ言って申し訳ないんだけど、今日は帰ってもいいかな…」
紘斗さんとちゃんと話したくて…と、言うから、すぐにうなずいた。
今の2人は一緒にいた方がいい。
俺の話も聞いて欲しかったけど、それはまた今度。
俺とのお泊まり会は、紘斗さんが本当の出張の時にすればいいんだから。
それからすぐに湊世さんを迎えに来た紘斗さん。
玄関まで見送りに出た柊吾と俺に深々と頭を下げた後、愛おしそうに湊世さんの手を取った。
湊世さんも嬉しそうに微笑む。
「今日は本当にありがとう。今度会えた時は環生さんの話も聞かせてね」
「うん、ありがとう。また聞いてね」
俺を気づかってくれた湊世さんは、2人仲良く帰って行った。
ラブラブ夫夫 の2人は俺の憧れ。
どうかいつまでも幸せでいて欲しい。
「柊吾、ありがとう」
「…環生はこれでよかったのか」
「うん、もちろんだよ」
「そうか、それならいい」
柊吾はそれ以上何も聞かなかったし、何も言わなかった。
ただ、俺に手を差し出してくれただけ。
「アイツが帰ったなら、俺の部屋で寝るだろ」
「うん…」
俺は柊吾の優しい手を取った。
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