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第14章 第15話
「じゃあ…行ってきます」
ここは空港の搭乗口。
送ってくれた麻斗 さんと柊吾 に、行ってきますのキスをする。
秀臣 さんと賢哉 さんは仕事の打ち合わせで、朝から出かけてしまった。
「気をつけてね、環生 」
「何かあったらすぐに連絡しろよ」
「ありがとう、麻斗さん、柊吾」
実はこのやり取り、もう3ターンめ。
なかなか2人(特に柊吾)が離してくれない。
心配してくれるのは嬉しいけど、一緒の飛行機に乗る皆に見られてちょっと恥ずかしい。
スタッフさんに『そろそろお時間ですよ』と促されて飛行機へ。
恭一 さんがいる北海道には2時間くらいで着く予定。
仕事先のホテルに恋人を呼んで会っていた…なんて、
スキャンダルの気配がするから、恭一さんが滞在するホテルから車で10分くらいのホテルを予約した。
一緒に過ごしたくて、ダブルベッドの部屋にした。
恭一さん、驚くだろうな…。
喜んでくれるかな…。
あぁ、楽しみ。
早く会いたい。
でも…お仕事だから期待しすぎはよくない。
会えなかった時、悲しくなってしまうから…。
予定通り空港に着いた飛行機。
電車を乗り継いで予約したホテルに向かう。
ドキドキしながら、恭一さんに居場所と部屋の番号を連絡して、待つ事にした。
待っている間に、湊世 さんから連絡があった。
紘斗 さんにちゃんと気持ちを伝えたって。
紘斗さんも、自分には湊世さんしかいないって再認識したらしく、さらに優しくなったと、嬉しそうに話してくれた。
湊世さんは俺の話も聞いてくれた。
今、恭一さんに会うために北海道に来ている事を伝えたら驚いていた。
環生さんが気持ちを伝えられるよう願ってるね…と、応援してくれた。
「こんばんは、環生さん」
20時を少し過ぎた頃、仕事を終えた恭一さんは、すぐに俺のいる部屋へ顔を出してくれた。
「こんばんは、恭一さん。俺…どうしても恭一さんに会いたくて…。すれ違ったままじゃ悲しくて、それで…」
北海道まで来た理由を説明できるよう、練習までしたのに、会えた喜びが先行して上手く話せない。
もじもじしていたら、ぎゅっと抱きしめられた。
恭一さんの温もりが嬉しくて、俺からも抱きつく。
「飛行機に乗っている時に思ったんです。あぁ、もしこの飛行機に何かあったら、もう環生さんに会えないんだと…。だからとても嬉しいし、感謝しています。今夜は一緒に過ごしましょう」
「いいんですか?お仕事は…?」
「今日はもう終わりました。明日は朝7時にホテルを出ます。現場から直接次の町へ移動するのでこちらには戻って来られないんですが…」
「大丈夫です。充分です」
明日まで10時間も一緒にいられるなんて嬉しい…。
その間に仕事の準備やお風呂、睡眠…と、やる事はたくさんだけど、同じ空間にいられる事が幸せ。
「恭一さん、俺…恭一さんにくつろいで欲しくて、いい香りのする入浴剤持ってきました」
「ありがとうございます、環生さん。せっかくですから一緒に入りましょう」
恭一さんは、頬にチュッとキスをしてくれた。
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