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第14章 第18話(※)side.恭一
〜side.恭一 〜
「…恭一さん…」
いつもより甘えた声で私の名を呼ぶ環生 さん。
頬を撫でて手を握ると幸せそうに微笑む。
私の腕の中で果てた環生さんは、私史上、最高に愛らしかった。
素直に反応する感じやすい体、普段とは違った大人びた表情。
私を見つめる濡れた瞳、甘い声…。
環生さんが悦んでいる姿に胸が熱くなった私は、夢中で愛撫を繰り返した。
今もハァハァと呼吸する度に上下する胸。
絶頂の余韻で時々ビクッと反応する体。
抱きしめると、汗でしっとりした肌が吸いつくようだった。
「環生さん、大好きですよ」
「俺も…大好きです」
嬉しい…と、頬を染める環生さんは、いつもの見慣れた柔らかな環生さんに戻っていた。
キスをしようと唇を寄せると、待っての合図。
様子をうかがっていると、クシュン…と可愛いくしゃみを一つ。
体を冷やさないようバスローブを肩にかけると、嫌がるそぶりを見せた。
「…俺、恭一さんにも気持ちよくなって欲しくて…」
恥じらいながら、そっと私の下半身に手を添えて硬さを確認した環生さん。
小さな耳は先ほどよりも真っ赤になっていた。
「私は大丈夫ですよ。続きは…帰ってからにしませんか?また時間がある時に環生さんを抱かせてください」
このまま先へ進んだら自制が効かなくなる恐れがある。
必要な道具もないこの状況下、勢いだけで体を繋げる訳にはいかない。
環生さんを大切にしたい。
淋しそうな顔をする環生さんをなだめるつもりで髪を撫でる。
環生さんは何か言いたそうな顔をしていたけれど、しばらくすると静かにうなずいた。
「体が冷えますから着ましょうか」
バスローブを着せようとすると、また嫌がる様子。
「…やっぱり嫌です。恭一さんに触れたい。恭一さんが俺を大切にしてくれてるのはわかるし、嬉しい。でも…もう我慢するの嫌です」
そう言い切った環生さんは、半ば強引に私の下半身をまさぐり始めた。
それは明らかに性的なもの。
あまりに積極的で、気圧されてしまう。
「た、環生さん…」
「俺…恭一さんの気持ちや考えを尊重したいって思ってます。でも、時々は俺もワガママ言いたいです。嫌われるのを恐れてずっと『いい子』でいるのは無理なんです。我慢を続けて、大好きな恭一さんに不満を感じてしまう自分が嫌なんです」
涙ぐみながら必死に気持ちを伝えようとする環生さん。
あぁ、そうか…。
きっとこれを伝えるためにわざわざ出張先まで足を運んでくれたのだろう。
離れ離れの物理的な距離と、すれ違いが続く心の距離を埋めるために…。
「話してくれてありがとうございます、環生さん。自分の考えを優先するあまり、大切な環生さんを自分の手で遠ざけてしまうところでした」
許してくれますか…と伝えて、指先で涙を拭う。
「俺の方こそごめんなさい。恭一さんの大切なところ、無理矢理触ったりして…」
手を離そうとする環生さんの手を取って、自分の下半身へ。
「環生さん、もう一度触れてくれますか?」
「…い、いいんですか?」
「もちろんです。環生さんに触れてもらえるなんて幸せですよ。でも、体を結ぶのは帰ってから改めてにしましょう。素敵な思い出になるよう、準備をしたいんです」
「…はい、そうします」
環生さんは心から幸せそうに微笑んだ。
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