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第14章 第21話side.柊吾

〜side.柊吾(しゅうご)〜 今日は環生(たまき)が北海道から帰ってくる日。 皆、それぞれ仕事だから空港への迎えは俺だけだ。 家にいても落ち着かなくて、1時間も前に着いた。 到着口で待っていたら、大きな荷物を持った環生が現れた。 「柊吾」 俺の姿を見つけてすぐに駆け寄ってきた環生を抱きしめる。 28時間ぶりの環生。 見た目や抱き心地にさほど変化はなかった。 違うのは髪のにおいと手触り。 ホテルのシャンプーのせいだ。 「ただいま、柊吾。久しぶり」 「あぁ、おかえり、環生」 離れていたのは28時間だ。 だが、割と一緒にいる俺たちにとっては『久しぶり』だ。 「貸せよ、その荷物持ってや…んんっ」 環生は俺の話を遮ってキスをしてきた。 アイツと上手くいったら、俺はもう用済みかも知れないと覚悟をしていたから驚いた。 「会いたかったよ、柊吾。お土産いっぱい買ってきたよ」 予想以上に環生が甘えてきて戸惑う反面、北海道に行く前とさほど変わらない様子に胸を撫でおろす。 まぁ、清々しい顔で帰ってきたから、きっとアイツとも上手くいったんだろうな…。 「何か変わった事あった?」 「特にないな。こっちは環生がいない事以外はいつも通りだ」 「そっか…よかった」 たわいもない会話。 バス停で待っている間のわずかな時間も楽しい。 俺の手を握って嬉しそうに寄り添ってくる環生が可愛い。 風で乱れた環生の前髪を直すふりをして、頬を撫でる。 環生も俺の手の甲を撫でたり、指をきゅっと握ったりして甘えてくる。 誘うようなヤラシイ触り方。 俺が不安にならないようにわざとそうしているのか、アイツとじゃ満足しきれなくて欲求不満なのかはわからないが、そんな事はどうでもいい。 早く家に帰って環生を可愛がりたい。 どさくさ紛れにキスをしようかと思って、腰を抱き寄せた時だった。 「君たち、仲がいいのはわかるが、人前でイチャつきすぎるのはよろしくないなぁ」 背後から中年の男の声がしてドキッとする。 環生を庇いながら声のした方を見ると、何故かそこには父さんが立っていた…。

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