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第15章 第2話
「嬉しそうですね、環生 さん」
「はい、幸せすぎて夢みたいです」
嬉しくてニヤニヤしながら歩く俺を見て幸せそうに微笑むのは、大好きな恭一 さん。
海風を感じながら仲良く手を繋いで遊歩道を散歩する。
今日は本当に幸せな日。
恭一さんが選んでくれたデート先は、初めてキスをしたあの海の近くの小さな工房だった。
2人で一緒にペアリングを作るプランを予約していてくれた。
お互いの作った指輪を身につけていたら、離れていても側に感じられるからって。
手作りと言っても本格的なのじゃなくて、好きなリングの素材と土台を選んで、ハンマーで叩いて模様をつけたり磨いたりして仕上げるカジュアルスタイル。
迷って選び切れなかった俺に恭一さんが選んでくれた少しマットな色合いのシルバーのリング。
ちょっと控えめな色合いで普段使いしやすそうだし、俺の肌に馴染む気がした。
デザインは俺が選ばせてもらった。
ツルッとした手触りのリングだと、家事をしている時に傷がついてしまいそう。
俺が選んだのは、傷も目立ちにくくてオシャレなちょっとでこぼこした見た目の「鎚目仕上げ」っていうデザイン。
リングの内側にはメッセージを刻印してもらった。
2人で相談して決めた『Always with you(いつもあなたと一緒に)』
恭一さんがペアリングを作ろうとしてくれた想いに一番近かった。
作っている時の恭一さんも素敵だった。
手際よく模様をつけていく器用さもだけど、優しく微笑みながら作っている姿が尊くてつい見惚れてしまったほど。
俺を想ってくれてるのかな…なんて思うと、嬉しくて泣きそうになった。
完成したペアリングは、初めてキスをしたあのベンチでお互いの指にはめ合った。
結婚式みたいだな…なんて思ったら、急に緊張してしまって、ちょっと記憶が飛んだ気がする。
左手の薬指にはまった恭一さんお手製の指輪。
世界に一つだけの俺の宝物。
思い出の場所で指輪の交換をしたから、記念にキスを…と思うけど、今日は日曜日だしお天気もいいからカップルや家族連れがいっぱいいて、なかなかそんな甘い雰囲気になりきれなくて。
…で、遊歩道を散歩している俺たち。
キスできなかったのは淋しいけど、積極的に人前でするものでもないし、今日はお泊まりデートだから時間もたっぷりある。
ペアリングをしている一体感と、今日ずっと一緒にいられるっていう安心感。
後でたくさんキスも、その先もしてもらうんだ…なんて甘いひと時を想像すると、胸が高鳴る。
「環生さん」
恭一さんの唇が近づいてくる気配。
あ、歩きながらキスするの…!?と、思っていたら、その唇は俺の耳元へ。
「2人きりになったら…キスをしませんか?」
俺にだけ聞こえた、甘く優しいキスのお誘い。
頬がかあっと火照るのがわかる。
恭一さん、そんな誘い方…ずるすぎる。
俺の心臓…どうするつもりなの…。
俺は黙ってうなずく事しかできなかった。
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