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第15章 第4話 

恭一(きょういち)さんが食べさせてくれたケーキは、どれも本当に美味しかった。 期間限定の味を楽しむと、季節の移り変わりを感じられるから大好き。 来年、栗やカボチャのケーキを食べたら、今日の事を思い出すんだろうな…。 美味しいケーキと恭一さんの優しい笑顔や温もり。 合間にキスもしてもらえて、心身共に幸せでいっぱいになった。 俺も恭一さんに『あーん』をした。 食べている時の優雅な口元に、やたらドキドキした。 恭一さんに食べてもらえるケーキがうらやましい。 俺も食べて欲しい。 恭一さんの一部になりたい。 お腹いっぱいになった後は、仲良くくっついて夕方までお昼寝タイム。 いつもはそれほど昼寝もしないのに、恭一さんの側にいるとすぐに眠くなるから不思議。 安心できるのかな…。 お互いのにおいや温もりを共有しながら、穏やかなひと時を過ごした。 夜は恭一さんの手料理。 サンマの塩焼きに、肉じゃが、筑前煮、卵焼き、野菜たっぷりのお味噌汁。 共働きの両親を早くに亡くしてしまった恭一さんは、家庭料理を一緒に食べるのが憧れみたい。 『家族』のように思ってもらえる事が嬉しい。 早く本当の家族になりたいな…。 恭一さんの理想や選んだ物に囲まれる幸せ。 大好きな恭一さんの世界の中に存在できる事が至福。 そんな中で初夜を迎えたら、身も心も恭一さんづくし。 恭一さんのフルコースだ。 ご飯の後は仲良くお風呂に入って、お揃いのパジャマを着て、並んでベッドに腰掛けた。 北海道の夜の続きみたい。 今から恭一さんと結ばれるんだと思うと、ドキドキが止まらない。 何とも言えない緊張感。 セックスの始まりってどんな感じだったっけ…。 普段のエロエロな俺はどこへ行ってしまったんだろう。 「改めて…となると、少し照れますね」 「そう…ですね」 恥ずかしくて、顔を直視できない。 うつむいたままでいると、恭一さんがそっと俺の手に触れた。 「私は今から環生(たまき)さんを抱きたいと思っています。本当に私が触れてもいいですか?」 「はい…。俺の望みは大好きな恭一さんと結ばれる事です」 俺の気持ちは決まっているのに、最終確認をしてくれる恭一さん。 こんなに幸せなのに、改めて言葉にされるとさらに幸せ度がアップする。 「環生さん…」 「恭一さん…」 愛おしそうに俺を見つめる恭一さん。 緊張と喜びで泣きそうになってしまう。 「愛しています、環生さん」 慣れ親しんだはずの恭一さんの唇は、いつもより熱い気がした…。

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