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第16章 第5話

ふと目覚めたら、眠っている恭一(きょういち)さんの腕の中にいた。 今、何時かな…。 外は真っ暗だからきっと夜中なんだと思う。 濃厚なセックスが気持ちよすぎて、そのまま眠ってしまったらしい。 体もキレイになっていたし、きちんとパジャマも着ていた。 こんなにお世話されても気がつかなかったなんて…。 少しだけ気だるい体を起こして、恭一さんの顔をのぞき込む。 眠っていても整った顔立ちの恭一さん。 こんな薄明かりの中で見てもため息が出てしまうほどキレイ。 はぁ…目が幸せ。 見飽きる事はないと思うけど、一緒に暮らすようになったら、見慣れるのかな…。 ううん、日々素敵さが更新されていくだろうから、絶対毎日ドキドキしちゃう。 更新前の恭一さんを見られるのは今だけ。 せっかくだからもうちょっと近くで見せてもらおう。 起こさないよう気をつけながらそっと近づく。 「はぁ…やっぱり素敵」 「ん…」 恭一さんが俺の声に反応するかのように動くからドキッとして息を止める。 いけない、うっかり心の声が漏れてしまった。 静かにしないと…と、意識すると、何故か鼻がムズムズし始めて、くしゃみが出てしまった。 「…寒いですか?環生(たまき)さん」 「えっと…あの、その…」 恭一さんのキレイな寝顔に見とれていました…なんて恥ずかしくて言えなくて。 「よい子は寝る時間ですよ」 少し眠そうな恭一さんは優しく微笑んで頭を撫でてくれた。 おとなしく恭一さんの腕の中に戻る。 手は定位置の恭一さんの下半身へ。 「おやすみなさい、環生さん」 「おやすみなさい、恭一さん…」 おでこにチュッとキスをした恭一さんはすぐに眠ってしまった。 呼吸で上下する胸の動きや、一定リズムの寝息を感じると、心がじわっと温かくなる。 同じ時代に恭一さんが生きている事や、俺の側で眠っている事がたまらなく幸せで涙がこみ上げる。 いけない、このまま泣いたら鼻水が出ちゃう。 恭一さんに心配かけたくないし、これ以上睡眠を妨害したくない。 それに、鼻が詰まったら恭一さんのにおいが嗅げない。 せっかくのにおい嗅ぎ放題のお泊まり日にそれだけは避けたい。 「もうちょっとだけ…」 俺は、きゅっと体を寄せて眠りについた…。

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