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第16章 第7話side.麻斗
〜side.麻斗 〜
「じゃあ、行ってきます。麻斗さん、柊吾 。お昼にお弁当食べてね」
「ありがとう、環生 。気をつけて行っておいで」
手早く朝家事を片付けた環生は、香川 さんとお花見弁当を持って嬉しそうに出かけて行った。
「柊吾、ちょっと話そうか」
「ん…」
「どうだった?香川さんと3人の生活は」
秀臣 と藤枝 さんが、新婚旅行を兼ねてヨーロッパ各地を巡る旅に出ているから、昨夜は3人きりだった柊吾。
「ん…正直、3人でご飯食べるのも変な感じだな…とは思った。でも、幸せそうな環生が見られたからそれでいい」
柊吾は淡々と答えながら、お弁当箱に入りきらなかった山盛りのから揚げをつまむ。
その声音や表情からは上手く気持ちが汲み取れなかった。
「それは…本心?」
「まぁ、割と。慣れた面もあるし、環生とアイツがどんな生活してるのかが見れて安心できる部分もあるし」
そう言ってまたから揚げを一つ。
柊吾は環生のから揚げが大好物だ。
「柊吾は大人だね」
「何だよ、それ…」
「正直なところ、あの2人を見ると、自分が想像していた以上に胸が苦しくなるんだ。仲がいい事は喜ばしい事だし、邪魔するつもりもないし、それがベストなはずなのに大事な環生をとられてしまった気がして…」
淋しいよ…と、俺もから揚げをつまむ。
今日のから揚げも美味しい。
あと何度このから揚げを食べられるだろうか…と思うと切なくなる。
「驚いたな。俺たちの中で麻斗が一番冷静だと思ってた」
「自分でも驚いてるよ。まさかこんな気持ちになるなんてね。恋愛感情とは違うんだけど、何だかね、一緒にいすぎたのかも知れないね」
親気分でいるのかな…と苦笑すると、柊吾がニッと笑った。
「環生は淋しがりやで欲張りだからな。心配しなくても完全に俺たちとの関係を断ち切る事なんてしないだろ」
環生の一番の理解者である柊吾。
環生と仲のいい柊吾は確信できる何かがあるのか、それとも環生を信じているのか。
母さんが家を出て行った時と状況は違うけれど、側にいた大切な人がいなくなった後の淋しさや、苦しさは充分なほど知っている。
あの時の気持ちをまた味わうのかと思うと怖くて、不安で怯えているだけなのかも知れない。
「環生は大丈夫だ」
柊吾は俺を勇気づけるように断言して、またから揚げを頬張った。
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