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第16章 第11話
〜side.柊吾 〜
そのまま土手で話したり、散歩をしたりしていたら、すぐに日が暮れた。
環生 と一緒にいると、時間が三倍速で過ぎていくように思う。
晩ご飯は環生のリクエストでキッチンカーのピザとホットワイン。
散歩してお腹が空いたと言う環生のために、大盛りのフライドポテトもセットだ。
昼間は暖かかったが、夜になると肌寒い。
薄着の環生に上着を貸そうと思ったらやんわりと断られた。
こっちの方がいい…と、座っている俺の脚の間にちょこんとおさまった。
「これなら2人ともあったかいから…」
俺に背中を預けながらふにゃっと笑うほろ酔いの環生が可愛い。
さっきは人目を気にしていたのに、暗くなっただけですぐにこの調子だ。
きっと周りのカップルがイチャついてるから、どさくさ紛れに甘えてきたんだろう。
「ライトアップした夜桜もいいね」
「そうだな…」
とは言いつつも、正直なところ環生しか見ていなかった。
夜桜より腕の中の環生を見ていたかった。
抱きしめながら頭のてっぺんに何度かキスしていると、振り返った環生がじっと俺を見た。
「ね、ちょっとだけ…」
そう言ってキス待ち顔をする環生。
酔うと人肌を恋しがるエロエロ環生がちょっとで済むはずがない。
おいおい、どうなってるんだ…。
さっきまでアイツとデートしてたんだろ…。
昨日の夜からずっと一緒にいて満たされたんじゃないのか?
アイツだけでは満腹にならなかったのか、相手が俺に代わったから別腹扱いなのか…。
「柊吾、早く…」
キスして…と、体を寄せてくる。
俺がこれに弱いと熟知している環生は、かなりのハイペースでおねだりを発動してくる。
今いるのが家だったらお互いが満足するまで思う存分キスできる…が、ここは外、ここは外…。
理性を保ちつつ、触れるだけのキスをした。
「えー、本当にちょっとだけなんだ…」
不満そうな環生は、スネたふりをしてポテトをつまむ。
今日の帰りは電車だ。
発情した環生を乗客に見せたくないし、俺もそんなのを見せられたら歯止めが効がなくなりそうだ。
「続きは家に帰ってからな」
俺はそう言って頭を撫でる事しかできなかった。
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