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第16章 第12話side.柊吾
〜side.柊吾 〜
『やだ、もっとする』
酔ってキスを迫る環生 をかわしながら、何とか電車に乗った。
駄々をこねる環生も可愛すぎて、理性を保つのにかなりのエネルギーを使ったと思う。
電車はそこそこ混んでいたが、扉のすぐ横を陣取った。
環生を壁際に立たせて向かい合う。
前に痴漢に遭った事がある環生を守りたくて、なるべく人と接触しないようにしたかったし、周囲の目から隠したかった。
「ありがとう、柊吾」
ちょっと怖かったから…と安心したように微笑む環生。
俺の陰に隠れて急におとなしくなった。
それはそれでつまらないな…と、勝手な事を思っていると、カーブに差し掛かった電車が揺れた。
「あっ…」
ふらついて転びそうになる環生を抱き止める。
さっきまで感じていた温もり。
一度触れたら、離すのが惜しくなってそのまま抱きしめ直した。
「柊吾…?」
不思議そうにしながらも、抵抗する様子はない。
それどころか俺の背中に手を添えてきゅっと抱きついてくる。
本当は環生も甘えたかったのか…?
公衆の面前でイチャつくのは色々問題アリなのはわかっている。
…が、触れ合う下半身の熱を感じると、行為中の環生が思い出されて体が火照る。
「…したくなっちゃうね」
俺の耳元に唇を寄せて恥ずかしそうに環生が囁く。
『したくなっちゃうよ』じゃないのが環生らしいと思う。
『環生のしたい時=俺のしたい時』だと信じているあたりが。
「帰ったらしような」
「うん…」
頑張って我慢する…と、名残惜しそうに体を離す環生。
我慢させるのも、するのも辛くて、途中下車してホテルに行くか…?と、視線を送る。
お互いの事を理解していると、言葉にしなくても何となく伝わる。
こういう時は便利だ。
『柊吾のベッド』
声には出さなかったが、環生の唇がそう動いた気がした。
俺のベッドが好きな環生。
俺のにおいがするシーツと、生の俺のにおいを嗅ぎながら抱かれると幸せな気分になるらしい。
そういうところが可愛いと思う。
明日の講義は3限目からだ。
時間はたっぷりある。
早く帰って環生を抱きたい。
そう思いながら、そっと環生の手を握った。
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