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第17章 大人のおもちゃ

梅雨が明けて、暑い暑い夏が続いた。 経験した事のない暑さで、夏休みの柊吾(しゅうご)とエアコンの効いた部屋でゴロゴロしたり、カブトムシ一家のお世話をしたりして過ごした。 夏バテするといけないから…と、ご飯もアイスクリームもモリモリ食べた。 運動すると汗だくになるから…と、ストレッチをサボっていたら、見事なワガママボディになった。 恭一(きょういち)さんは、食べられるのは元気な証拠だし、柔らかな抱き心地の俺も好きだって言ってくれる。 保科(ほしな)家の皆にも、胸やお尻がムチムチで気持ちいいとか、シルエットが可愛いとか言われて油断していたら、去年はけたボトムスがパツパツになってしまった。 秋になったら美味しい物が増えるし、チョコレートや生クリームも恋しくなる。 クリスマス、お正月、バレンタインデー…と、カロリー過多なイベント続きで痩せられる気がしない。 このままだとさすがにヤバイかも…。 そんな危機感を覚え始めた頃、秀臣(ひでおみ)さんと賢哉(けんや)さんが、新婚旅行と視察を兼ねたヨーロッパ旅行から帰ってきた。 「おかえりなさい秀臣さん、賢哉さん」 「帰ったぞ、環生(たまき)」 「ただいま、環生。会いたかったよ」 久しぶりの2人との再会。 ぎゅっと抱きついたら、2人の着ている物からは旅先のにおいがした。 ちょうど皆揃っていたから、早速リビングで話を聞きながらお土産の開封式。 各国のお菓子や調味料、衣類、食器類。 大量すぎてお店屋さんみたい。 ロンドンでは誠史(せいじ)さんにも会ったとの事。 相変わらず仕事が忙しいけど元気だったと聞いてホッとする。 俺をイメージしてブレンドしてもらった紅茶と、メッセージカードを預かってきてくれた。 『環生の温もりが恋しい』 たった一言だけのメッセージだけど、会いたい、触れたいって思ってくれてるんだ…。 俺も誠史さんの温もりが恋しい。 優しい眼差しも、俺を呼ぶ甘い声も、大人の魅力たっぷりなにおいも全部が恋しい。 切なくなって紅茶の缶を抱きしめると、賢哉さんがそっと肩を抱き寄せて、頭をポンポンしてくれた。 「そうだ、環生には特別なお土産があるよ。世界観が変わる物ばかりで環生もきっと気に入る」 「特別なお土産…?」 「家に置いてきたから今日の夜泊まりにおいで」 優雅に微笑む賢哉さんは、そう言って俺の耳に口づけた。

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