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雨の中で3

 一度すれは余裕が生まれて、次はゆっくりとそこを楽しむことが出来た。  男の表情も楽しむ。   わざとゆっくり動かし、焦らしもした。  「悪い男だな、あんた」  男が囁いた。  でも、腰を使われたなら持っていかされそうになるのはオレの方で。  オレは男の唇を果物みたいに貪る。  そして、立ち上がった男のそこを弄る。  「前じゃダメなんだ、ダメなんだってば」と、集まるだけの快感に苦しむ男を見て楽しむ。  まるで、勝負でもするかのように男の中で動いた。  男も勝負を受けて立つかのように 、尻を動かした。  オレ達は思わず笑った。  くだらない勝負が、気持ち良くて、おかしくて。  勝負の結果は相打ちで、ほぼ同時にイった。  女とするのとは違った。  女の代わりでしてるんじゃなくて、オレは男だからこの男を抱いたのだと、妙に納得していた。  国では死刑な交わりは、知ることのなかった快楽だった。  「すごい傷痕だな、オマエ、マフィアか何か?」  男がベッドで煙草を咥えながら、オレの背中 銃創痕を指でなでながら言った。  「オレがマフィアに見えるか?」  オレは笑った。  「いや、警察官か軍人って感じだな。あんたこの国の人間じゃないしな」  男はオレの傷痕を舌でなめあげた。  その感触にぞ くぞくした。  もう何度もしたのに、またしたくなる。  男はひどく手慣れていて、もう忘れられない程に淫らだった。  男の方に寝返りをうち、煙草を取り上げ、唇を重ねてその舌を味わう。  煙草の味がした。   「返して欲しいな」   男はオレから煙草を取り戻す。  「それ吸ったら、もう一度」  オレは男にせがむ。  「男にハマった?」  男は柔らかに笑う。  「いや、あんたにハマった」  オレは真面目に言った。  男は目を丸くした。  「随分直球だね」  でも、まんざらでもなさそうな様子にオレは心の中でいけると思う。  「これで終わりにしたくない」  煙草を吸う男を抱きしめる。  もう固くなったオレのそれを男のそれにこすりつける。  それを繰り返せば、男のそこもオレのと同じようになっていく。  「あんただってそうだろ?」  オレは言ってはみたが、それには自信がなかった。  男は明らかに経験豊富だったし、オレは男は初心者だ。  でも、オレの身体が心が本能が、コイツを逃がすな離すなと言っている。  オレはオレの勘には逆らわない。  それで今まで生きてきたからだ。   「いいの?  国の軍人さんが、  国の同性愛者なんかとするのは問題があるんじゃない?」  男がしばらく考えてから言った言葉に、オレは男の腕を掴む。   「何故、オレが  国の軍人だと!」  尋問するように言いかけて、オレは笑った。  「そうか、同性愛は死罪とか言ったしな」  今時そんな国は限られていて。  「でも、あんた   人なのか」  オレは少し緊張する。  オレの国とこの男の国はつい数年前まで激しい戦争をしていたからだ。  「私に興味なくなったか?」  男の笑顔は真意が伺えない。  「いや、オレは国を捨てたし、もう、どうでもいい、それよりアンタこそ、どういうつもりだ」  男に聞く。  「どうって?」  男はオレを面白そうにみつめながら尋ねかえす。  「オレが  の兵士だったと知っていて、何故オレと寝た?」  オレはこんな会話をしている間も、男に触れたかった。    どうでもいい会話だと思っていた。  でも、おそらく。  オレ達の世代は徴兵されていたから、この男も何らかの兵役があるはずだ。  前線の兵士になるには華奢すぎるから後方任務ってところか。  でも、かっての敵国の相手と寝たいと思うのだろうか。      昔の仕事の感覚だ。  疑え。疑え。疑え。  偶然などない。   「もう、いいかなって思ったんだな、私は戦争なんかしたくなかったし 、1人の兵隊がどんな意志を持っていても意味 なんてないことは身にしみたし。直接オマエが私の知り合いを殺したなら別だが、あんなにたくさんの人が死んだなら、もうそれも分からないし」  男は遠い目をして言った。  オレはその言葉の意味がわかった。    「オレ達はただの弾丸だ。引き金を引くのも、狙うのも、上の偉い人達だろ、だからまあ、いいかなって。なんか必死で可愛かったし」  男は笑った。  オレは男の煙草を取り上げる。   ベッドサイドの灰皿に押しつぶす。  もういい。  おしゃべりもいい。  「オレももう、軍人はやめたし、国に帰る気もない。帰るところもない。だから、アンタを抱きたい。これからも」  男の返事は待たなかった。  させる気もなかった。  唇をふさいで、組み敷いて。  覚えたての抱き方で男を抱いた。    

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