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逢瀬は雨の中で1
オレ達が会う日は、雨が多くて。
「アンタ、雨男?」
オレは尋ねる。
オレ達は雨の中を傘もささず歩く。
この男には傘を差す習慣がない。
「何故」
男は不思議そうに言うが、こんなに会う度雨が降るのはおかしいと思わないのか。
「雨男はオマエだろう、オマエに会う時ばかり雨だ」
男が笑う。
なる程。
この男からすればオレが雨男なのか。
「オレ以外の誰かと会ったりするのか?」
オレは背後から男を抱きしめる。
人通りの中で男とそんなことをするなんて、オレの国では有り得ないことだったが、今のオレは気にしない。
「まあね」
男は澄ました顔で言うのが憎らしい。
「こんな風に会うわけ?」
オレはオレのモノを男の尻におしつけながら、男のコート下に手を入れて、淫らにその乳首を弄る。
「なあ、会うのかよ」
首筋をチロリと舐めて囁けば、男は吐息を漏らす。
「やめろよ、こんなところで。お国じゃ死罪だろ」
男は呆れたように言う。
オレはイタズラはやめたが、男の肩を抱いて歩く。
早くベッドに行きたい。
「 軍のお堅い軍人さんが大した変わりようだな」
男は呆れる。
「アンタにハマったんだよ」
オレは笑う。
この 週に一度程の逢瀬だけが、オレの楽しみになった
「なぁ、本当に他のヤツと」
オレは不安になる。
別に何か約束をしているわけではない、でも、オレはこの男を独占したい。
どうしても。
「・・・とりあえずはオマエだけだ。今のところは」
男はそう言った。
妙に恥ずかしそうに。
何故か、胸が弾んだ。
「明日さ、映画でも行かないか?」
オレは出来るだけ何気なく言ってみた。
ドキドキしていた。
セックスの誘い以外も受けてくれるだろうか。
「オマエが映画館の暗がりで、私に悪さをしないと約束出来るなら」
男は少し考えてから言った。
嬉しそう、にみえる。
見える気がする。
「それは約束できないけど、行こう」
オレは男の肩にまわした腕に力を入れた。
今日はまたヤるだけの安宿だが、明日映画を見たらオレの家に誘ってみよう。
オレが作る夕食を食べさせよう。
オレの足取りが軽いのは、男が抱けるからだけではなかった。
冷たく濡れても良かった。
どうせ、すぐ、お互いの体温で熱くなる。
慣れれば慣れるほど、男の身体に溺れた。
オレの指がなじむほど、オレの舌がその味を覚えるほど、男もオレの愛撫に乱れた。
涼しい顔した、何事も興味ないような顔している男が、その時にはこんなにも強請り、せがむと知った。
それを知るのはこの男を抱く者だけだと思うともっと泣き乱してやりたくなる。
オレの形を覚えたその穴のどこでどのように感じるかを、全部試したくなる。
前だけではいけない男が泣くまで、それを咥えておいこんでやりたくなる。
どちらが相手を先にイカせるかのゲームは今のところ、互角だが、いつか、ずっとオレが泣かせでやると決めている。
男の国に行きたいとは思ったことはなかった。
敵だったし、寒い国だと知っていたから。
オレ達が戦っていたのは植民地で。
その国での資源を巡っての戦争で、オレ達は支配している国同士が支配している国の資源を奪い合って、支配している国の人々達を巻き込み殺しながら殺し合っていたわけで。
もうオレの国も男の国もどうでもいいとおもっていたのだけど。
明るい色の男の髪。
白い肌、淡い目。
日差しの淡い国をオレは思った。
その太陽の下にいるこの男を見てみたいと思った。
でも今は。
オレは男の白い肌に舌を這わした。
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