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逢瀬は、雨の中で

 次の日は、朝飯を二人で食べに行き、映画を見に行った。  まだ、会った回数はそれでも10回に満たなかったし、セックス以外では会ったことはなかったから、オレはドキドキしてしまった。  女の子と初めてデートした時でもこんなにドキドキしたことはなかった。  食事したり、映画を見たりしながら、男は自分のことも少し話してくれた。  オレよりなんと3つ年上だったこと。  今は政府から外国での請負仕事をしていていること。  「大した仕事じゃない。言われたことをそのままするだけの簡単な仕事だ」  男は言った。  天涯孤独な身の上であること。  猫が飼いたいけれど、仕事のせいで定住出来ないから飼えないことなど。  オレも話した。  母親と妹が死んだので、オレも天涯孤独なこと。  母国ではなく、植民地育ちなこと。  実は母国には訓練以外では行ったことがないこと。    軍をやめてからはこの国の警備会社で働いていること。  そして、猫を飼っていること。  「猫、飼っているのか」  男はそこにびっくりするほど食い付いた。  猫の写真を見せてやると、声をあげて喜んだ。  意外な一面だった。  「いいなぁ。可愛いなぁ」  男があまりにもうらやましそうに繰り返すから 、オレはこのチャンスをのがさなかった。  「オレの家に来るか?」  猫に会える、と。  男はしばらく考えていた。  電話番号を交換して、週に一度セックスする仲以上になることに躊躇いがあったのだと思う。  「行くよ」  そう言われた瞬間、オレはレストランで男にキスしてしまっていた。  嬉しかったのだ。  セックス以外の場所での男もオレは欲しくなっていて。  「猫に会いに行くんだからな」  オレに男は赤くなりながら言った。  やはり、雨が降る中をオレは男を連れ家に向かった。  途中、雨の中でキスをした。  もう、初めてあった日のざらつく感じはしない。  オレの作った飯を食べたら、オレのベッドに寝てくれるだろうか。  そして、オレと朝を迎えて、キスしてくれるだろうか。  不安を消すようにキスをする。  「キス、巧いよな、これに捕まったんだ」  男がため息をつく。  「じゃあ、もっと捕まってくれ」  オレは囁く。  「いつも直球だな、オマエ」  男は笑う。  オレはしばらく男を抱きしめた。  男はオレに身を任せていた。  駄目だ、これ。  オレはこの男に惚れきっている。  

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