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終わりへと進む夜1
終わりは突然やってきた。
男とは週に一度どころか、週に何度も会えるようになった。
ふらりと夕方やってきて、オレの作った飯を食い、猫と遊び、オレとセックスをして、一緒に寝て朝ふらりと帰っていく。
「目的は飯か?セックスか?」
オレがオレの家に入り浸る男に笑って尋ねると、男は真剣な顔で答えた。
「猫だな」
オレ以外には懐かぬ猫が男には懐いた。
猫と男の髪は同じ色で、男の淡い瞳も猫の目と同じだった。
完全にオレのモノにはならない感じも猫だな、とオレは思った。
合い鍵を渡した。
男は照れくさそうに受け取った。
男と寝る夜は幸せだった。
男はオレの身体の傷跡を舐めるのが好きだ。
「なかったことにしてやりたい」
ひとしきり舐めた後、
男はオレの頭を抱え、髪を撫で囁いてくる。
オレは男の胸に頭を載せてそれを聞く。
優しい声だ。
セックスの後のこんな優しい時間がオレは好きだ。
そんなに沢山恋人がいたわけではないが、誰ともこんな時間を持ったことはなかった。
「夜、うなされてるぞ」
髪を撫でる男の指が優しい。
「でも、目覚めた時にアンタがいてくれたら、オレは眠れるんだ」
オレの身体の傷跡は多い。それはオレの悪夢の理由でもある。
「最前線にいたんだな」
男はつぶやく。
男とオレは敵同士だったから、戦争の話はしない。
でも、その日は少し踏み込んだ話をした。
「ああ、酷いもんだった」
オレはオレの髪を撫でる男の指を掴んで、その指先にキスをする。
綺麗な指だ。
オレみたいに、酷いことはこの指はしていないんだろう。
「オレはこの手に人を傷つけた感触がないから」
男の言葉にオレは微笑む。
やはり後方勤務か。
仕事も特殊な技師みたいだしな。
「なあ、もう一度だけ」
オレら起き上がり、男を抱き締めてせがむ。
「さっきもそれ言っていなかったか?お前はいつもそう言うな」
男は呆れたように言ったが、オレの首に手を回して、キスをした。
「優しく、な」
そう囁かれたから、オレはうんといやらしく、優しく、オレの恋人を抱いた。
その夜、オレは眠る恋人を抱きしめながら、恋人に聞かれぬように囁いた。
その言葉が恋人の重荷になって逃げてしまわないように。
「愛してる」と。
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