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雨恋情3

 男は、とうとう立っていられなくて崩れ落ちた。  でもオレは許さない。  水たまりのできた、その冷たい建物と建物の隙間のコンクリートの上で、オレは男を犯し続けた。  崩れ落ちた男の腰を持ち上げ 、犯す。  男は冷たいコンクリートに顔を擦り付け、喘いだ。  これが最後になるとわかっていたら、手放すことなどできなくて。  オレは一度男の中から引き抜いた。  オレは男を仰向けにした。  コンクリートの上に組み敷く。  「こんなところで、裸に剥かれて犯されるっていいもんか?」  オレは男の脚を押し広げのしかかりながら言った。  背中が痛いし、冷たいだろう。  そう思ってしまう自分がいる。   ちゃんとベッドで優しく抱いてやりたい、そう思う自分がいる。  でもコイツはコイツは。  男がどんな顔をしているのか見たくて、見たくなかった。  憎まれている、当然なのにそれが何故か辛くて。  でも、押し入りながら見下ろした男の顔は。  オレを見る顔は。  なんで、そんな優しい顔をしてるんだよ。  淡い瞳がオレを見ていた。  「泣いてるのか、お前」  男は静かな声で言った。  男の指がオレの顔に触れて。  オレは自分が泣いているのを知って。  涙をその指で拭われて。  オレは、男の中に入ったまま、男を抱きしめて、慟哭した。     「なんでなんでなんで!!」  オレは叫んだ。  男の両腕がオレの背中に回され、オレを抱きしめた。  しばらくそうしていた。  そして、オレは泣きながら男を味わった。  丹念にあますところなく。  でも、優しく、男が感じるように。  男から唇を重ねてきた。   強請られて、乳首を吸い、噛む。  甘く喘ぐ声。  恋人がオレの背中をなでる。  冷たい雨が落ちてくる。  でも、熱い  キスをしながら男の瞳を見る。  淡い瞳。  男も、見つめ返す。    何度も「愛してる」と口走りそうになる。    今夜が最後だ。最後なんだ。  次は殺し合う。  どちらかが死ぬ。    なあ、戦争なんかなければ、オレがアンタを愛することを誰にも止めさせたりなんかしなかった。  でも、そう言うことすらオレには許されない。  言葉の代わりにオレは恋人にキスを繰り返した。  恋人の中は暖かで。  溶け合ってしまいたいと、何度も思った。  もう、何も出なくなるまで、男の中に放った。  男が意識を飛ばしても、ずっとずっと、抱き続けた。  意識のなくなった男を、抱きしめて泣いた。  離れる時、その場で出来るだけのことはした。  破いた男のシャツでからだを拭いてやり、穴から零れる精液を出来るだけ掻き出した。  それでも、酷いレイプの痕は明白で。  壁やコンクリートにうちつけられ出来た痣。  掴んでできた、オレの手の痕。  思わず噛んだ、肩や首には血が滲んでいた。  冷たい雨に濡れそぼっている。  オレは脱ぎ捨てていた男のズボンを拾った。  下着はオレに破かれているし、精液でぐちょぐちょだ。  直接ズボンをはかせた。  そして、オレのコートを脱いで男に着せた。  濡れているけど、裸よりはいい。  壁に男をもたれかけさせた。  雨の中、このまま置いて行くのかと思ったが、殺す相手の身体の心配をすることの可笑しさに、自分で笑った。  このまま死んでくれたなら。   それはそれで良かった。  オレが殺したことにはなるだろう。    恋人はそんな状態でも綺麗だった。    もう一度だけ口づけた。  淡い瞳の色は閉じられていて、もう、見ることはないのだろう。  次見るときは、恋人は死んでいるだろうから。  オレに殺されて。  オレは恋人を貫くだろう。  オレのモノではなくナイフで。  もう聞こえないなら、もう言わないから、殺すから、ちゃんと殺すから。    オレは囁いた。  「愛してる」  そしてそこを立ち去った。  振り向かなかった。                 

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