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殺し合う1

殺し合うのも雨の中  恋人は言った。  兵士は弾丸に過ぎない。  引き金を引くのも、狙うのも、上の人間達で、一兵士の意志など何の意味もない、と。  「言われたことをするだけの簡単な仕事」  だと、現役のスナイパーである男は言った。  「オレには殺した感覚がない」と。  そうだろう。  離れて撃つ、スナイパーには手に殺した感覚などない残らないだろう。  オレは違う。  暗殺専門のオレはナイフが専門で。  的確に喉をかき切り、声もなく殺すことが求められた。  必要に応じてはすぐには死なぬように、臓腑をえぐる。  情報によっては楽に殺してやると、囁きながら。  感覚は手に残る。  最初は感情のスイッチを切って殺していた。  家族を殺されてからは憎しみで殺していた。   いつしか、楽しんで殺していた。  その方が楽だと知った。  殺した相手の顔など覚えちゃいないが、殺した感覚だけは覚えていて、今でも、夢に見る。  あの男を責められるような人間ではない。  数こそ、あの男よりも少ないけれど、残忍さでは男はオレには及ばない。  そうだな、家族さえ殺していなければ、それでもオレはあの男を許せたかもしれない。  オレ達は同じだ。  駒でしかない点では。  沢山の人間を殺した戦争は、植民地を焼き尽くし、互いの母国すら危険に晒すようになり、終わった。  痛み分けで、植民地の資源は分割された。   でも、納得がいかなかった奴らがいた。  オレ達を弾丸にして、引き金を引いた奴らだった。  男の国の王族達。  オレ達の国の指導者達。  引き金を引くだけの連中が、決着を欲しがった。  自分達のためだけに。  だから、これはこの戦争の中で一番くだらないゲームだった。  

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