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殺し合う2

 オレと男は、植民地の山間にあるその空き地を使い、殺し合うことになっていた。  小さな塔があり、そこにいる男をオレが狙い、男がそれを迎撃する。  オレには圧倒的に不利なゲームだ。  殺した数をスコアだとしたら、スコアの数が男とオレでは何倍とも違う。  だが、オレはスナイパーを殺すことに、長けていると言う評価があった。  そう、オレはスナイパーを殺すのが好きだった。  奴らの目をかいくぐり、忍びより殺す。  作戦決行前に、大使館に呼び出された。  「向こうは楽勝だと思っている。思い知せてやれ!」  上機嫌に上層部はオレに言った。  オレは黙って敬礼した。  そうだな、やられるつもりはない。  あの男を殺す。  もしもオレが死に、男が生き残り、オレ以外の誰かがあの男の身体を抱くかと思うと耐えられなかった。  一緒に生きることも耐えられなかった。  殺すしかなかった。  木の間から、目視で塔を確認する。  双眼鏡は使わない。   レンズの煌めきで一瞬で撃ち抜かれることをオレは知っている。  石で作った塔は3階ほどの高さで灯台のような形をしていた。  一番上にだけ、部屋がある。  おそらく、見張り台として使われて来たんだろう。  4方向に窓があり、死角は少ない、入り口は一つだけ、小さな階段があるのだろうと見切りをつけた。  上の小さな部屋の四方向にライフルは据え付けられているのだろう。  だが、さすがの男も見つけることができなければ狙えない。  木の中にいれば、見つかることは少ない。  問題は塔の近くには障害物がなにもないと言うことだ。  森から出て、塔に近づけば、男に撃たれるのは明白だった。  おまけに、生憎と言うか、やっぱり雨が降っていて。  太陽の射す方角を利用することも出来ない。  眩しさを利用することも出来たのに。  塔の上から狙われる以上、オレは圧倒的に不利なのだが、一つ利点はある。  スナイパーがどこからねらってくるのかがわかっていることと、あちらはオレがいつねらってくるのかわからないということだ。  雨が柔らかく頬を打つ。  雨は男を思い出させた。  胸の奥が痛み、同時にこんな時にも関わらず、オレは欲情した。    股間のモノが疼いた。  もう、触れることのない身体が脳裏をよぎっていた。  忘れろ。  集中しろ、集中。  オレは自分に言い聞かせた。    緑の布をかぶり、木々の間を移動する。  人間のシルエットを隠すためだ。  人間の形状するものか動いていれば、あの目はそれを逃さない。  布をかぶり、頭、肩、首などといったシルエットをかくす必要がある。  ただ、男が動くものを全て撃つ可能性はあった。  でも、今回は弾丸は限られている。  やみくもには撃たない方にかけた。  これはゲームであり、男の方が圧倒的に有利であるからこそ、男に与えられた弾丸は10発だった。  後は短銃に6発。  それでも多い位だ。  男は一発で仕留めるのだから。  オレにも銃が渡されているか使うつもりはない。  撃ち合いになれば確実に殺されるのはオレだからだ。   一旦塔から離れる。  近づくためには仕掛けが必要だ。    ナイフ位しか道具はないが、何、いつだってあるものでなんとかしてきた。  オレは仕掛けを考え始めた。  一瞬、こんなバカバカしいゲームはやめて逃げてしまおうかとも思った。  「逃げれると思うな 、ちゃんと兵士を配備して、見張っているからな。逃げようとすれば銃殺する」  と言われた。  両国仲良く協力して、この空き地を見張っているらしい。  仲良しじゃないか。  この上の連中のためのエンターテイメントはそこまでしてするものなのか。  なんならテレビで実況中継したらいいんだ。  オレはバカバカしくなった。  でも、やめなかったのは、塔にいる男のためだった。  アイツがあそこで待っている。  それだけで続ける意味はあった。    

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