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殺し合う3

 オレは森の際で布をかぶりながら、仕掛けが発動するのを待った。   仕掛けは発動してくれるだろうか。  この辺は何とも言い難い。  多分大丈夫だとは思うが。  発動すれば、銃声が響く。  さて、あの仕掛けが動くかどうか。  しばらく待つと、予定よりは遅かったが、銃声が森の中から響いた。  これでそちらの方角に男はの注意は向くはず、オレは布を被ったまま塔へと走った。  僅か100メートルのほどの距離。  でも弾丸は一瞬で届く。  男が何秒、音の方を見るかだけが勝負だった。  塔まで届くか。  届いたところで入り口も階段も一つ。上りきった階段の前で、銃を持った男が待ち構えているのは間違いない。  さあ、どうする?  オレは走った。  思ったようにスピードが出ない。  男はのんびりしてくれるほど甘くない。  早く塔にたどり着かなければ。  銃声と衝撃は同時だった。  三発の銃声は、布を被っていたにもかかわらず、きちんと狙い通りの場所をうちぬいていた。    頭と肩と足。    オレは倒れた。  でも、塔の入り口にはたどり着いていた。    撃ち抜かれた右手と左脚は使いものにならないだろう。  男は見事に撃ち抜いていた。  オレは男がここに来ると知っていた。  入り口に侵入した者の生死を確かめるために、男はやってくるはずだった。  オレは銃を手にした男の姿を確認した。  ライフルではなく、短銃だった。  男は無慈悲に入り口に倒れている人間に、短銃に入った弾を6発撃ち込んだ。  オレはそれを聞いてた。  男が、ゆっくりと階段を下りる音も聞いた。  男が悪態をつく声が聞こえた。  気付いたのか。  その時には、もうオレは階段の一番上で男が上がってくるのを待っていた。  死体を確認し、殺したのがオレではないことに気付いた恋人はここまであがってくる。  ほら、駆け上がってくる音がする。  愛しい愛しい、オレの恋人。  しかし、よくもまあ、無慈悲に弾を撃ち込んでくれたな。  結構切ないぜ。  お前はオレだと思って撃ったんだろう?  残念だったな。    駆け上がってきた男を、男のライフルでオレは撃ち抜いた。  片手で、しかも左手でも、この距離ならオレでも撃てる。  もう男の手にした銃には弾がないことはわかっていた。  死体に全部撃ち込んだんだろ?  確実に殺すために。  「なん、で、ここに」  男はつぶやきながら階段を落ちていく。  ここにオレがいるとは思わなかっただろ?  オレではない死体を見た時、オレに下までおびき寄せられたと思ったんだろ?  だから慌てて走って上がってきたんだろ?  オレは呻く男を見下ろした。  死にはしない。  すぐには。  片手で狙ったライフルの弾は、腹を貫通しただけだ。  もう一発撃っておいた。  脚を撃ち抜く。  これで動きはとまる。  オレは片足で跳ねながら階段を下りていった。  オレはダミーをつかった。  男が頭を撃ち抜いたのは、布を被ったオレが背負った死体だった。  撃ち抜いた手足は確かにオレのものだったけれど。  男が弾丸をぶち込んだ、塔の入り口に倒れていたのも死体だ。  オレは男が弾丸を打ち尽くす間に、壁を上り、最上階にたどり着いていたのだ。  オレは 片手片足を撃たれたら歩けないが、壁なら十分登れる。  ダミーにするための死体は、俺たちを監視しているという兵士で調達した。  二人、監視していた奴を攫った。  あんな連中で俺たちを監視しようと言うのは笑えた。  一人は弾避けにするために殺し、もう一人は仕掛けに使った。    両手を頑張ればほどける程度に縛っておいた。  そして立ち上がれば、その力で銃の引き金が引かれるという簡単な仕掛けだ。  頑張ってくれなければ、仕掛けは作動しなかったので危険な賭けだった。  多分、きちんと仕掛けが作動していれば、今頃あの兵士は頭を撃ち抜かれて死んでいるはずだ。  そういう風に銃をセットしておいた。  殺す必要はなかったのだが、まあ、ついでだった。  二人ともどちらの国の兵士なのかもわからなかった。  紛争を避けるためか、どちらも正規の軍服は着ていなかったからだ。  別にどちらの国でも良かった。  とにかく、オレは二人の兵士を道具として使い、男の裏をかいたのだ。  階段の一番下で、のたうつ男の元へオレはゆっくり下りていく。  オレの愛しい恋人のもとへ。    

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