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殺し合う5
恋人は死のうとしていた。
オレは恋人の中を夢中で貪った。
気持ち良かった。
死にかけた恋人を抱くのはこんなにも気持ち良かった。
夢中で動いた。恍惚となった。
オレが殺すのに、オレのせいで死んでいくのに、オレは悲しくてしかたなかった。
良かった。
とんでもなく気持ちよかった。
悲しかった。
苦しすぎた。
もういいだろう、そう思った。
もう、言ってしまってもいいだろう。
言えなかった言葉を。
どうしても、聞かせることができなかった言葉。
「愛している」
オレは囁いた。
今更の言葉。
「愛している」
なんて虚しい。
「愛している」
オレは泣きながら、男に向かって叫んだ。
その言葉の重さに恋人が逃げてしまうのが恐ろしくて言えなかった言葉。
男は、もう、死んでいたのだと思う。
オレの言葉が届いたのかどうかは分からない。
でも、恋人の中はまだ暖かくて。
オレは恋人を貪り続けた。
オレは 、確認に来た兵士達が俺達を引き離すまで 恋人を貪り続けた。
オレを恋人から引き離すのに、奴らは麻酔銃を使わなければならなかった。
「狂ってるコイツ」
兵士の一人がオレを見て叫んだ。
動かない男の死体を、叫びながら犯し続けるオレは、確かに狂っていた。
ゲームの陰惨な終わりは、上の連中達もさすがに楽しめなかったらしい。
彼らはもっと楽しいエンターテイメントを期待していたのだ。
殺人兵器同士の一騎打ちみたいなものを。
見張りの兵士さえも道具に使い、殺した相手を犯す。
そんな狂ったモノなど見たくはなかったのだ。
ゲームを勝利に導いたにも関わらず、誰も喜びもしなかった。
むしろ、誰もがなかったことにしたがった。
同性愛者は死刑。
それがオレの国の法律だが、オレは無罪放免になった。
凄まじいストレスで、一時的におかしくなった、そういうことで。
本当はそこであったことをなかったことにしたかったのだろう。
オレは、何度も戦争中勲章をもらった英雄だったし、今回の代理戦争を勝利に導いた人間でもあったからだ。
国はもうオレには関わりたくないのが良くわかった。
国外でしずかに暮らして欲しいのが本音だろう。
それはオレの望むことで。
オレはまた、静かな毎日に戻っていった。
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