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危険な夜の過ごし方4

 「大丈夫か」  その声がして、その指がオレの肩に触れた時、オレは正気に戻った。  まるで魂が身体に戻ったみたいだった。  オレ、何してたんだ。  今日のオレ、どうしたんだ。  「随分、扇情的な格好だな。いいねぇ、そそられる」   その人が、ボタンを止めていないため、はだけて露わになったオレの胸を撫でる。  あちらこちらにすいあげられた痕がある。  「オレは、オレは」  オレは今日1日のオレの行動を振り返る。  オレはどうしちゃったんだ。   「慣れない真似はやめるんだな」  オレにその人は言った。  オレの初恋の人。  初めての相手。  この人がオレに触れた瞬間、オレの頭がスッキリした。  欲望がおさまってる?  「確かにここはそういうバーだがあまりも露骨すぎるのは商売に差し障りがあるってね、オマエを知ってるマスターからオレに連絡来たわけ」  オレは慌ててボタンを止めた。  あの人が残念そうな顔をする。  どうせ、オレとはしないくせに。  この人の禁欲がいつまで持つのかは分からないが、オレとしないことだけは分かっている。  「オレ、何して」  オレは立ち上がり帰ろうとした。  立てない。  それはそうだ。  今日の乱行を思い出し、さすがに顔が赤くなる。  「送るよ」  あの人か言った。  「オレに言う資格はないが、オマエはもう少し自分を大切にした方がいい」  抱えられるようにしてあるく間に、あの人が言った。    あなた。  あなたがいいの。  あなたじゃないと  オレじゃない誰かがオレの中で言った。  オレはおかしい  おかしかった

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