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不安な夜の過ごし方
教授は心配そうにオレを見ていた。
オレはヒゲをそってしまってからの教授の顔が苦手だ。
この人は熊みたいな姿のおじさんだったのに、突然ヒゲをそり、髪を整えて 、別人みたいなハンサムになってしまった。
着ぐるみを脱いだと学生からは言われている。
くっきりとした野生的な目鼻立ち、目尻の皺も魅力的だ、
44才だと聞いていたけれど、今なら35才位で通る。
こうなる前の教授は、本当に楽に話せたのに。
今でも尊敬してるし、一緒にいると本当に楽しいけれど、大好きだけど、でも、何か、落ち着かなくなる。
こんな風に見つめられたら。
黒い瞳が、不安に揺れながらオレをみている。
視線が熱く思えて。
オレの首筋を撫でる指も熱い。
教授はオレを心配してくれているだけだし、
教授はキスマークが気に入らないだけなんだろうけど、オレはそんなものさえ違う風に身体が感じてしまう。
オレは漏れそうになる吐息をこらえる。
ヤバい、また始まる。
教授を避けていたのは、オレがおかしいからだ。
あの人送ってもらった日ほどではないけれど、オレがおかしくなるからだ。
オレが欲望を押さえられなくなるからだ。
手近なところで誰か捕まえて、セックスさえしさえすれば収まるけれど、するまでは頭がおかしくなって、何も出来ない。
医者にいかなきゃ。
セックス中毒なんだきっと。
「触らないで」
オレは喘いだ。
嫌だ。
オレは教授が好きだ。
尊敬しているんだ。
この人はオレがゲイでも気にしない。
オレが日ごと相手を変えて遊んでいても、
心配しながらも、オレを軽蔑なんかしなかった。
こんな姿は見せたくない。
オレを抱くすべての男達をオレはどうでも良いと思っているけれど、この人には嫌われたくないんだ。
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