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眠れぬ夜の夜の過ごし方5

 「取り憑かれたらどうなるんだ」  教授があの子に尋ねる。  「生気が奪われてそのうち死にます」  相変わらず、言いにくいことをさらりと言うなこの子。  「だからでしょうね、異常な性欲は。失われる精気を他人から奪おうとしていたんでしょう」  あの子はオレのおかしくなった理由を説明してくれた。    「じゃあ、何、このままオレは死ぬわけ?」  オレは正直に言った。  「他人から精気を奪えば大丈夫、かも」  あの子が言う。  つまり、乱交してしまくらないとダメなわけか。  「魔除けがあれば異常性欲や、自分の意志を奪われることは避けられますが、その分早く命が縮むと思うな」  あの子の言葉にあの人が笑った。  「じゃあ、セックスしたらいい」  気持ちいいし、と。  あの人らしい。  「オレ は自分の意志を奪われるのは絶対的嫌だ。それに相手構わずってのは危険すぎる」  オレはそこだけは譲れない。  「教授としたらいい」  あの人はしれっと言って、教授が咳き込んだ。  コーヒーがむせたらしい。  真っ赤になっている。  「乱交や無茶苦茶な真似をしなくても、普通にセックスするだけでも、少しは精気が得れるだろう。時間稼ぎにはなる。教授なら事情も知っているし、相手にしても危険はない」  一応、真っ当な理由はあるらしい。  「何もしなければどれくらいで死ぬ?」  あの人があの子に聞きにくいことを聞く。  「多分、明日、明後日。この数日のセックスはちゃんと延命になっていたと思う」  あの子も言いにくいことを言う。  「明日、明後日」  オレはさすがに 、絶句した。  「中の人はどうしたら出て行ってくれるんだ」  オレは尋ねる。  「この人の望みが叶ったら。愛しい人と死こと」  そこまで言ってあの子は気がついたようにあの人に言う。  「あなたが死んであげたら、この人は納得するかもしれない」  あの人は固まっている。  想い人に死ねと言われたわけで。オレは多少同情する。  そういうわけにもいかないし、オレは頭を抱えた。  「だから、とりあえず教授とセックスしとけ」  あの人は言う。  「ダメですよ」  オレは断言する。  「教授とする位なら、バーで男を漁ります」  「なんで嫌がるんだ。減るもんじゃあるまいし」  あの人が不思議そうに言う。  そうでしょうね、あなたは好きな人以外は誰でも同じだから、誰でもいいってタイプだからわからないでしょうね。  「とにかく、教授とはしません。教授はゲイじゃないし、ゲイだとしても教授とだけは絶対にしません」  オレは断言した。    何故か教授が床に座り込んだまま起きあがらなくなっている。  何故かあの人が気の毒そうに教授を見つめる。   「とにかく、オレはどこかで男拾ってやってきます」  まだ死にたくはないし。   オレはどこかでセックスしてくることにきめた。  仕方ない。  「ダメだ」  教授が言った。  怖い声だった。  いつの間にか起き上がって、オレの隣にいた。  「そんなことはさせられない」  教授がオレの腕を掴む。   「行かせない」  強く握りしめられて、腕が痛い。  教授の目がまた、あの時の、キスの時みたいに、黒く光っていてオレは怯える。  あ、キス。  教授とのキスを思い出してしまった。  かあっと身体が熱くなる。  すっかり忘れて、いや考えないようにしていたけど、オレこの人とキスしたんだ。  先ほど教授の腕の中にいたことも思い出されて、オレは顔が赤くなるのを感じた。  赤面。  オレが。  オレはゲイ仲間ではビッチで有名なのに。     「じゃあ、僕が相手をしましょうか」  固まってるオレをさらに固まらせることを、あの 子がいいだした。  あの人も教師も固まった。    「キスね」  オレは納得する。  「僕は元々神の食料ですから、精気は普通の人より大量ですし」  あの子は笑った。  それどころか、彼は神の精をその体内に受けてすらいる。  これはまた違う話。  とにかく、彼から精気をわけて貰うことになった。  「あの人にあなたの中の人が反応したのは、僕とあの人がその、」  あの子は真っ赤になった。   「してるからかもしれません。僕の影響をあの人が受けているから」  小さい声で言う。    あ、ヤバい。  かなり可愛い。  そうだよな、恋敵だったからアレだったけど、この子可愛いもんな。  でも、だからか。あの人に触られた瞬間、オレがマトモに戻れたのも。  「ダメだ、ソイツとキスさせるくらいなら、オレが代わりにいくらでもセックスしてやる」  そう言っている男を教授がこの部屋から引きずり出したけど、  いや、意外とあの人が正解かも。  結構ヤバいかも。  オレもあんまりあの人と手の早さでは変わらないし。  キスされて、それで終わりにできる気がしない。  不意にふわっと唇が触れた。   彼の口からエネルギーが入ってくるのがわかる。  でも、それだけで、簡単に離れた。  あっけなかった。  これだけ?  性的に物足りなかった  帰ると言ったのだが、当分泊まるように言われ、しかも教授の娘にせがまれて。  オレは前の事件がきっかけで、教授の娘にとても懐かれている。    彼女は大人になったら、オレと結婚するらしい。   ゲイでビッチなオレだけはやめておくべきなんだが、まぁ、子供の言うことだし。  これからは1日一回はあの子から精気をわけてもらわなければならないからしばらく泊まる方がいあかもしれない。  「君には負担にならないのか?」  とあの子に聞くと  「人間一人位ならたいしたことは足りません。妖魔を体内に生涯封じ込めた人達に比べれば」  あの子は言う。  あの子は離れているはずの、南の島のシャーマンと常に連絡を取り合っている。  どうやっているのかは分からないが。   スマホやパソコンを使ってないのは確かだ。  シャーマンである老婆の島には電気もない。  「教えることなど何もない」  南の島の老婆は彼についてそう言ったそうだ。  妹の方は長期休みの度に彼女の元で色々訓練を受けているらしい。    透けるような眼差しを見ていると、あの子がどんどん人間離れしていっているような気持ちになる。  去年の彼は、可哀想な生け贄でしかなかったのに。  綺麗になった。  そして、どんどん人間ではなくなっていく。  教授は彼を「英雄」と言った。  神を殺す者は英雄なのだと。  オレはその先を考える。  英雄の結末は悲劇も多いのだ。  普通には生きられない者。  それが英雄。  彼はどうなるんだろう。  そこまで考えて、オレは頭をふる。  今はオレのこれから先の方が問題だ。    教授の娘とテレビゲームで遊んだり、お喋りして、晩飯までご馳走になった。  風呂をかりて、あの子の服まで借りた。  身長はオレのが少し高いが、身体付きは良く似ているので着れる。  教授の家の客室のベッドに横になってたら、教授が部屋にやってきた。   「少し話をしよう」  教授は言った。    「はい」  オレは起き上がる。  教授はオレの横に腰掛ける。  ベッドに二人で座っているだけなのに、オレは落ち着かない。  教授は部屋の灯りをつけようとはしなかった。  開けたままのドアから差し込む、廊下の灯りだけがぼんやり教授のシルエットを浮かびあがらせる。  「大丈夫か?」  教授は心配そうに言った。  「ひさびさ寝れるだけでもありがたいです。こな何日もまともに寝てなかったので」   そう、セックス三昧だった。  当分はいらない。  教授は黙った。  沈黙が何を意味しているのか分からなくて、オレは少し怖くなった。   昼、色々あったから、いつもなら安心だけしか感じない教授に緊張している。  何故、教授はオレにあんなキスをしたんだろう。  教授はゲイじゃない。  それは知っている。  でも、あのキスは。  オレは考えるのをやめた。  「でも、このままだとオレ、せっかく留学決まったのに」   精気を得るために彼を連れて外国には行けないし 、留学先で乱交三昧など出来るわけもない。   いつまでも、彼に頼るわけにもいかない。  一生そうするわけにもいかないのた。  「どうしよう」   オレは思わず弱音をはいた。  隣に座るシルエットが動いた。  オレは一瞬怯えた。  この何日も何日も、男の身体にのしかかられてきたからだ。  喘ぎ声、肌、身体の重さ、それらについてオレは知りすぎるくらいそれを知っている。  今日はいい、もう、いい。  「大丈夫だ。一緒に考えよう」  怯えるオレにその声は安心を与えた。  教授の声だ。  教授は肩を抱いただけだった。  教授もお風呂上がりらしく、ボディソープや、シャンプーの匂いがした。  その匂いと昼、オレを煽った教授の匂いは牡の匂いとしてではなく、安心できる匂いとして感じられた。  だから、オレは身体の力を抜いて、教授にもたれかかった。  大丈夫。  ここは安心なんだ。  教授は何も言わなかったけど、オレはすごく安心して。  そのまま、久しぶりの深い眠りについた。  

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