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眠れぬ夜の過ごし方6

 私の肩にもたれかかり、眠ってしまった彼をベッドに横たえ、布団をかける。  目の下のクマ。  やつれた顔。   痛々しい。  ゆっくり休むといい。  私は彼の髪を撫でた。  これくらいは許して欲しい。  「君が好きだ」  思わず声が出てしまう。  20才以上年の離れてた、しかも同性にまさか恋に落ちるなんて思わなかった。    「やせ我慢、抱いてしまえばいいのに」  アイツがいつの間にかドアのところに立っていた。  「早く帰れ」  私は冷たく言い放つ。  眠る彼の髪をもう一度撫でて、私は部屋を出て、ドアを閉める。  「何しているんだ、お前は?」  私はアイツに聞く。  アイツは先程まで、あの子が家事をこなすのを、食器を洗ったり、明日の朝食の準備等をしているのを、じっと見つめていたはずだった。  手伝いと称して、あの子にいらないちょっかいをかけるため、あの子に手伝いは禁じられてしまったのだ。  なので、ずっと見ている。  飽きることなく見ている。  すっとずっと見ている。  「もう、じっと見るなと怒られた。いいじゃないか見るくらい」  アイツは憮然としている。  怒られるだけで済むのはあの子位だ。  普通なら恐怖を感じるレベルの執着だ。  「さっさと帰れ。お前は泊めないぞ」  私は言う。  「何で抱いてしまわない?最初は戸惑ったりはするだろうが、アイツはあんたが好きだ 。受け入れてくれるぞ」  アイツは不思議そうに言う。  そうだな、お前ならそうするだろう。  「あの子が望まないことは何一つするつもりはない」  私は言った。  「お前には分からないだろうな。身体を通して心に触れようとするお前には。私はまず、彼の心に触れたいんだよ」  私の言葉に彼が笑った。  「激バカプラトニック」  でもそう言った後、真顔で言った。  「あんたみたいなやり方が出来てたら、アイツはオレをもっと受け入れてくれていたんだろうな」  身体から始まった、それでも彼なりの純愛はそれなりに大変らしい。    

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