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壊れた夜の過ごし方1
「お父さん、もう堪忍して」
あちきはせがむ。
「ダメだ。コレは罰だからね」
お父さんの声は優しいけれど、きつく穴を押し広げ、激しく突き上げられて、怒りが伝わってくる。
でも、それは的確で。
あちきはこの人に全部教え込まれたから。
まだ10にもならない頃からこの人に教えられてきたから、身体が反応してしまう。
ああ、いい、そこ
あちきは声をあげてしまう。
「普通の遊女なら感じるのは御法度だ。フリをするだけでいい。だけどお前は違う。お前は特別な客のための遊女だからね。本気でよがって、本気でねだれ、そういう風に私がしこんだ」
お父さんは痕がつかないように、でも丹念に乳首を嘗める。
もっと舐めて、もっと
あちきは男の髪をかき乱す。
もう誰なのか分からなくなって、もう分からなくてもいい。
いつも、そう、溺れてしまえばいいの。
「お前は最高の遊女だ。私が作り上げた、最高の商品だ」
お父さんが囁く。
あちきの母親は遊女。
遊女から生まれた子供も、見世のもの。
あちきはこの人の持ち物だ。
服を脱いで横たわるようにいわれた、幼い日からそれを忘れさせてはもらえない。
普通の遊女は初めての瞬間から値段に変えられる。
「初めて」さえ値段になる。
でも、あちきの初めてはこの人で。
店主が行うことは珍しい。
それはこの人が、新しい商品を作り上げたかったからで。
丹念に何ヶ月もかけて、身体を作り替えられた。
その穴が女のようになるまで。
女よりもよがり狂う身体になるまで。
初めて精をもらした日に、後ろの穴に入れられた。
それまでも、稽古と称して、穴をほぐされたり、口を吸われたりはしてきたけれど。
男でありながら女。
女でありながら男。
陰間などとは違う、もっと歪なものをつくることにこの人は没頭した。
あちきが初めて客をとった時にはあちきは、幼い身体でありながら、あまりに淫らな性技をみせて、客はあちきに狂った。
お父さんはあちきを上に跨がらせる。
「さあ、どうするのか教えた通りにやってみなさい」
男の腹に手をつき、あちきは左周りに腰をゆっくり回した。
そして、止まり、穴だけでしぼりあげる。
はぁん
声がこぼれる
「ああ、上手いよ。この私が持っていかれそうだ」
お父さんの声が荒くなる。
快感を追い、あちきは腰を動かし続けた。
折檻はそれ程長くはかからなかった。
あちきは布団の中で生娘みたいに泣いていた。
初めて散らされた時みたいに。
性技に長けたあちきを、難なくいかせるのはこの人くらいで。
この人と寝るのが一番辛い。
刻みつけられるから。
自分が物なんだって。
それが分かっていて、お父さんはあちきをたまに抱く。
教え込むために。
忘れさせないために。
「可愛いお前、覚えておきなさい。お前は遊女だ」
布団から出る時にお父さんが囁いた。
それは、深く深く刻みこまれた言葉。
物心ついた時からお父さんには可愛がられていた。
綺麗な着物を着せられ、三味線や踊りのお稽古事が始まった。
先生達に、読み方、書き方、歌や俳句も教わった。
将棋や囲碁はすぐに教えてくれた人を追い抜いた。
何をさせても筋が良いと誉めてもらえた。
小さな頃はお父さんお母さんの部屋で眠り、
10才になった頃には見習い遊女ではあったけれど、他の妓達とは違ってもう個室を与えられていた。
「特別」だから、と。
風呂もあちきだけは一人で入った。
まだあちきは自分の身体が他の遊女達とは違うとは分かっていたけれど、男であることは知らなかった。
でも、見習い遊女達よりは、下働きの幼なじみの方が自分に近いとは感じていた。
十になった頃、お父さんからの新しい稽古が始まった。
床入りについての知識を教えられ、屏風の隙間からお父さんと、姐さん達がお客と寝ているところを覗いたりもした。
お父さんの膝に乗せられ、胸をさすられたり、舐められたりされた。
ただ、未熟な身体は淡い快感をどうすることも出来ず、戸惑うだけで、お父さんもそれ以上はしなかった。
口吸いも教えられた。
だけど、あちきは発育が遅く、なかなかお父さんの言う大人にはならなかった。
だから、初めて白濁で寝間着を汚して起きた日、お父さんは笑顔であちきに言った。
「裸になって横になりなさい」
あの日、お父さんに言われた。
10になったばかりのあちきは言われたままにする。
お父さんには逆らってはいけない。
それがこの楼の掟だ。
姐さん達もそう言っている。
お父さんはじっくりとあちきの身体を見る。
肌をその手が身体の全ての箇所を滑っていく。
「白い肌、一級品の身体だ」
そして、あちきの股のそれを掴んだ。
びくん、あちきの身体が震えた。
姐さん達にはない。
他のいずれ遊女になる見習い仲間達にもない。
あちきだけにあるそれ。
あちきが特別だからだとお父さんは言っていた。
幼いなじみの下働きの にはあるのを知っている。
はあちきと一緒で遊女から生まれて、ここで育ててもらっている。
でもあちきは特別なので、お稽古や勉強をさせて貰い、お父さんに可愛がられているけれど、 は怒鳴れながら働かされている。
「今日の朝、起きたら着物が白く汚れていたのだって?」
お父さんがそこをさすりながら言う。
「はい」
そう答えながらもあちきは変な気分になっていく。
「大人になった印だよ」
お父さんが囁く。
「お父さん、やめておくんなさい」
あちきは身悶える。
毎日、芸事の稽古の他にあちきだけがお父さんから受ける稽古で、後ろの穴をいじられる時にも、そこがそんな感じになった。
お父さんから、先々月位から、穴を広げる練習をされている。
あちきは特別なので、他の妓達とは違ってお客と床を共にするには練習がいるのだと。
それをされている時もいつも前のそこは変な感じにはなったけれど。
でも、今日のはいつものとは違う。
これは違う。
「お父さん、堪忍して怖い怖い」
あちきは泣いた。
でも後ろの穴の練習の時もそうだったように、お父さんは許してくれない。
身悶えし泣くあちきをそのままにそこをさすりあげる。
それは立ち上がっていた。
あちきは怯える。
「本来ならばここだけで気をやるんだが、お前は特別だから、こちらも使って気をやる」
お父さんはあちきの後ろの穴に指をやった。
香油をたらされ、その穴をほぐされることにはなれていて。
お父さんの稽古で何度となく繰り返されたから。
でも、その日はいつも稽古とは違って。
いつしか、ほのかな快感は感じるようにはなっていたけれど、今日のあちきには辛すぎるほどの快感で。
慣れた指でかき回されれば
立ち上がったソコは呆気なく白濁を吐き出した。
あああ
あちきは叫ぶしかない。
精通を覚えたその日に、初めて人の手で気をやられて。
「お前は最初から後ろで気をやらなければならない。お前はここで感じなければならない」
それでも、お父さんの指は止まらない。
許して下さいませ
あちきはすすり泣く。
「お前は今日、大人になったのだよ。本当に美しくなった」
お父さんはあちきの胸を撫でさする。
それも馴らされた仕草で、あちきは悶える。
「陰間ならば10やそこらで客をとらされる。私はそんなモノには興味がない。未完成のものには興味がない。私が作り出したいのは、もっと違う、今までなかった花だ、淫らな花だ。男も女も皆狂う」
もっとも、ウチは男しか来ないがね。
お父さんは笑う。
お父さんが言っている言葉の意味はあちきにはわからない。
穴への指が増やされ 、胸を吸われることに乱れるだけ。
また立ち上がっていたそれに戸惑いながら、そこに触れられないことに苦しむ。
「ダメだよ、触っては。お前はこちらでイケないとダメだからね。今日からは私が相手をしよう。客を取れるまで」
触らぬよう、紐で手首を縛られ、うつぶせにされ、あちきはお父さんに尻を浮かされた。
「本来は初めての瞬間も売るのが遊女。しかし、ここまで育てたお前を壊されることがあってはならない。お前が相手では誰でも狂う。私がお前を散らして、本物の遊女にしてやろう」
お父さんは裸になっていて。
そして、怯えるほど大きなそれをあちきの穴に当てがった。
うう
あちきは呻く。
お父さんとの稽古で、張り方などを散々入れられ広げられていた穴はソレをなんとか受け入れた。
準備は出来ていたことをしらされる。
でも、ひどく苦しくて、ひたすら呻き、涙を流す。
「苦しいかい?でも、もうすぐ良くなる」
お父さんは優しく指で涙を拭う。
「前を触ってやれば 、苦しさも和らぐのだけれど、お前はもう準備ができているはずだからね、後ろだけで気をやるんだよ」
お父さんは背中を舐めあげて。
その感触にわずかな快感を引き寄せ、あちきは喘ぐ。
「そう、拾うんだ。気持ち良いところを見つけ拾え。そして狂うんだ」
お父さんがゆっくりと動き始めた。
苦しくて、呻く。
口からでるのは呻き声だけ。
「気持ちよいのを拾うんだ。これからお前はずっとずっとコレをするんだから」
お父さんは動き続ける。
あちきはお父さんの言う通り、快感を探す。
お父さんがそこをこすった。
はぁん
あちきは喘いだ。
それは気持ち良さだった。
「いい子だ。そう、もっと拾え」
お父さんが突きあげる。
ああ、ああ、
あちきは苦しみでは出ない声をあげる。
「気持ちいいなら、気持ち良いと言うんだ、いいと叫べ」
お父さんが囁く。
揺さぶられる。
いい、いい、
あちきは泣き叫ぶ。
「やはりお前は特別だ。いいか、これからずっと誰が相手でもお前は快感を拾い上げ、よがれ。拾い上げるんた。相手なんか誰でもいい。お前はお前だけで快感を拾って狂え。お前の身体は快感を拾える、そう仕込んでやる、分かったら返事をしろ」
お父さんの言葉にあちきは泣きながらさけぶ。
あい、お父さん、わかりました、
だから、だから、もう堪忍してぇ
再び立ち上がっていたそこから白濁を吹き上げながらあちきは喚く。
「まだだ、苦痛ギリギリのところからも快感を拾え。与えられる快楽ではなく、自分で快楽を拾い上げるんだ。誰が相手であっても狂えるように」
お父さんの声は冷静で。
姐さん達が言っていた。
お父さんは陰間茶屋あがりで、女がダメな先代に身請けされ、養子に来たんだって。
男も女も狂わす陰間だったって。
「お前は遊女だ。忘れるな。たとえ、身請けされて外に出れたとしても、お前は遊女だ」
お父さんは刻みつけるように、腰を打ちつける。
ふぅう
あちきはもう言葉さえ出ない。
泣きながら、背中をそらし、また白濁を吐き出している。
「お前には果物と野菜しか与えていない。生臭さのない天女のような身体にするために、育ちきって男になってしまわないように。だから、お前は長くは生きられないだろう。必要なだけは食べれず、毎夜、泣かされ、気をやられ。身体いたぶられ」
お父さんは言う。
奥で回される。
あちきは奥の感触も覚え、身体を震わせる。
いい いい
教えられたようにさけぶ。
「でも お前は、どんな男が相手であろうと、相手が誰であろうと、その瞬間、全ての男がお前にひれ伏す。そう、私であってもな」
お父さんがうっとりとささやいた。
「お前を抱く全ての男をお前は抱いているんだよ。だからお前は特別だ、お前は夜の中でしか存在しないのさ」
お父さんはあちきの中で放ち、あちきを散らした。
あちきはただ声をあげさけぶしかできなかった。
その夜散らされたのは、あちきの初めてだけではなく、あちき自身だった。
あちきは遊女でしかないことをあの日お父さんは身体に刻みこんだのだった。
布団にくるまり、すすりなくあちきに声がかけられる。
「だから言っただろう、折檻されるって」
そう言うのは幼なじみの で。
「だからあの先生は諦めろ」
そう言われたところで、あちきは諦める気などなかった。
「嫌だね。遊女か真夫を持ってどこが悪いのさ」
あちきは涙を拭いて、布団から出る。
姐さん達だって、本気の人はいる。
本気の人、真夫。
「ダメに決まってるだろ、あんな貧乏学者」
その言葉にあちきは、幼なじみの頬をひっぱたいた。
「先生を悪く言わせないよ。あちきの前では。何にも分かってないくせに」
あちきの言葉に幼なじみは首をふる。
「分かってないのはお前だ。まだ桝屋の大旦那の方がいい。どうのこうのお前は言うが、あの旦那はあん人なりにお前に惚れてる」
幼なじみは必死に言い募る。
「旦那が前に言った通り、お前はここにいたら長くは生きられない、年々白く消え入りそうになっているじゃないか」
幼なじみの言う通り。
あちきは自分が透けるようになっていっているのは気付いている。
そう、あちきは長くない。
長くは生きられない。
「外へ出るんだ。お前は何も変わらないって言うけど、俺たちはここしか知らないじゃないか。出てみるんだ。だから、身請けされるんだ、あの大旦那ならそれが出来る」
幼なじみの言いたいことも、あちきを思ってとのことも良くわかった。
でも、でも。
「ありがたいね、アンタの気持ちは嬉しいさ」
あちきは、真っ赤になった幼なじみの頬を撫でた。
あちきがつけた跡を労るように。
「でも、あちきはあの人しかいらないんだ。」
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