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探した夜の過ごし方1
見つけた。
オレは近世文学の論文を漁っていて、それを見つけた。
実際にあの心中事件かどんなものであったかについて書いているものだ。
歌舞伎で知られている話では、19才の遊女 と25才の学者 は には妻がいるにも関わらず、恋に落ちる。
遊女には身請け話があり、学者も妻を哀れに思い、二人は別れようとするが、どうしても想い断ち切れず、二人は心中することに決める。
そして神社の杜で二人は心中する。
遊女の喉を学者が突き、その後 、自分の喉を突き死ぬ。
というのが筋書きで、良くある心中物の一つだ。
実際にあった事件の方は
心中しようとするところまでは同じなんだけど 、遊女を殺した後、追っ手に追われ、学者は神社の外で追っ手の遊郭の者に殺されている。
そして、追っ手の男も何故か自殺している。
学者は元々は侍で、剣の使い手だったらしく、何故遊郭の男なんかに殺されたのかは話題になったそうだ。
斬らせたのだとも、本当は心中途中で怖くなって逃げ出したところで追っ手に襲われ、遊女の霊が剣を抜くのをゆるさなかった、とも。
とにかく、やはり確かに相手の男はここでは死んでいなかったのだ。
ただ気になったのは、その頃流行った女ばかりの殺人事件の疑いもこの心中事件にはかけられていたのだということだった。
この心中事件の後、女目当ての殺しはなくなり、追っ手の遊郭の男が犯人だったのではないかとの噂がたったとも。
気になる記述だった。
「再現?」
教授は考えこんだ。
「そう、とにかく納得させてやればいいんですよ。その場面を再現することは祭りなどでも良く行われていることで、実際に死ぬ必要はない」
霊や神を慰めるために、その場面を模した劇や踊りを行うことは世界的にも良くあることだ。
オレは遊女に理想の心中を行わせてやろうと考えたのだ。
納得すれば、離れてくれるだろうし。
オレの中で、遊女の記憶が混ざり込む時があり、オレはこの遊女を気の毒に思っていた。
現代に生まれていれば。
遊女の頭脳は素晴らしく、思っていた以上で、おそらく数学系の研究者にもなれただろう。
身体など売る必要などなく、夜に生きることだけを強いられることもなく生きられたのだ。
だけど、遊女は遊女のまま死んだ。
しかも、愛する人と死ぬことさえできなかった。
せめて、幸せに死ぬ記憶位あげたいじゃないか。
そりに何より、このままだと、オレも困るし。
「確かに。アイツを殺すことを真剣に検討するよりはいいかもしれない」
教授は頷いた。
「いい考えだと思います」
あの子もにこりと笑う。
「何の話?何の話?」
妹が自分だけが分からない話をされてすねている。
「大人の話だよ。また野菜残してるよ。食べないと」
あの子の言葉に妹は膨れる。
家族揃っての夕食か。
オレは当たり前のように教授の家で夕食を食べていた。
なんかホッとする。
オレは前の事件で家族とは絶縁されてしまったから。
いや、あの事件がなくてもいずれ絶縁されただろう。
家族はオレがゲイであることを受け入れなかっただろうから。
皆でしゃべりながら食べるご飯。
なんかいいなぁ、こういうの。
「面白い 。テレビ局もつかおう。イベントにすれば神社も協力してくれる」
あの人が言った。
家族と言う言葉からは一番縁遠いこの人も何故かいるんだよね。
おそらく、一家団欒には興味なさそうなこの人が、毎日来ている。
多分、オレがあの子に手を出さないように監視しているんだろう。
最近は入れる方でも色々名前を売っていたのをこの人はもちろん知っているので。
気持ちは分かる。
最近のご乱行からは、そうされても仕方ない。
学校のソノケのありそうな可愛い男の子は全員喰ったし。
実のところ、この家に厄介になってもう2週間。
いや、論文も仕上がったし、教授やあの人が頭脳系のバイトを回してくれるからお金も稼げたし、光熱費も食費も浮いて助かっているんだけど。
後、この中の人さえどうかすれば何の問題もないんだけど。
ちょっとばかり、禁欲2週間だと、ツライ。
人の家でオナニーなんて出来ないし。
ちょっと学校で、可愛い子ナンパしてやっちゃおうかな、なんて思ってしまっている。
もちろんセーフセックスで。
サークルは除名になってた。
仕方ない。
ちゃんと性病検査も受けて、大丈夫だったし。
ちょとセックスライフが楽しみたい。
オレはチラッと教授を見る。
うん、やはりハンサムだ。
単なる端正な顔ではなく、造作は粗いんだけど、意志の強さが感じられる顔
目尻にシワはあるけど40代には見えないし。
こんなに家庭的なのに、なんで独身なんだろう。
それに、どうやって教授は処理してるんだろう。
性欲を。
あの子は一週間に一回デートと称して連れさられ、ボロボロになって夜には帰されるので、処理というよりは貪られているけど、まあ、してるし。
出かけに精気をもらっておいて良かったと思った。
あの人の本気を受け止めとめるのは気の毒でしかない。
でも、教授は。
デートもしてないし。
どうしてるんだろ。
モヤモヤすることあるだろうし。
「どうした?」
教授がオレの視線に気づいて尋ねる。
オレは慌てて首をふる。
「別に・・・」
顔が赤くなっていなければいいけど。
男の子を引っ掛けることも何度か考えたのだけど、何故か遠慮することにした。
ちょっともう、とっかえひっかえのセックスもなぁと思ったわけで。
時折混ざる遊女の記憶のせいかもしれない。
結局のところ、誰でも何でも同じわけで。
本当のこと言えば、テクニックとかそんなのじゃなくて、好きな人とするのが一番良かったわけで。 まあ、オレの場合すればするほど切なくもなったけれど。
どんな乱れた夜よりも、好きな人と算術の問題を解くことが大事だった遊女の心がオレには分かるんだ。
どんなにイカされることよりも、好きだと言ってキスされたかった。
遊女かオレを選んだのは、遊女と同じ闇をオレがもっていたからだろう。
でも、身体はうずくわけで。
オレはズボンを下ろし、自分のモノをしごき、パジャマの胸をはだけ、乳首を自分で弄る。
誰かの中じゃないと、オレは前だけではイケない。
あの人のせいだ。
ハア、
吐息を殺し乳首を抓る。
生まれる快感を逃がさぬように追う。
昔はあの人を思うだけでもイケた。
今はなかなかいい妄想がなくて、困る。
なんとなく、教授の大きな手を思い出した。
オレの後頭部を掴んでキスした手。
オレの頬を撫でた手。
オレを掴んだ腕。
あんな手がこの胸を這ったなら。
大きな指が無骨に胸を這う。
そう想いながら胸をいじれば、ゾクリとした快感が生まれて、オレは震えた。
ハァァ
声を必死で殺す。
ここは人の家だ。
こっそりしないと。
オレのモノが簡単に立ち上がっていた。
オレは考えないようにしていた教授のキスの感触を思い出した。
穏やかな教授からは想像つかない位、激しいキスで、奪われるようなキスで。
オレは前をしごく
あんなキスをしながら、
ここをあの指がしごいたなら。
はぁ、
声が漏れてしまうのを必死で抑える。、
たまらなかった。
自分でしているのに。
考えてはいけないことを考えているのが分かっているから。
教授はダメ。
教授だけはダメ。
でも、想像だけなら少しだけなら。
教授の指がオレの後ろの穴を弄る。
それは大きな指で熱い。
ダメだ、ダメ。
僕が声を殺してイッた時だった。
「まだ起きているか」
ノックもせず、入ってきたのは教授だった。
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